歪エネルギーと線形座屈耐力を目的関数としたラチスシェル構造物の形態創生に関する研究2. 研究の背景
曲面構造特有の力学性状
曲げ抵抗型の曲面構造 軸力抵抗型の曲面構造
過大な曲げ変形 圧縮力による座屈
曲面構造特有の力学性状に対し,
力学的に合理性のある形状を選択することが望ましい
研究の目的
・設計荷重に対して相応の剛性を保持し,且つある程度の
座屈安定性を有したラチスシェル構造物の形態創生手法の提案
・ラチスシェル構造物の非線形特性の把握
3. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
1. 歪エネルギーと線形座屈耐力について
剛性:歪エネルギー 座屈安定性:線形座屈耐力
→歪エネルギーと線形座屈耐力を目的関数とした多目的最適化問題に帰着
2. 多目的最適化問題について
ひ パレート解
多目的遺伝的アルゴリズム(多目的GA) ず 集合
を用いた最適化手法 み
エ
→線形座屈耐力が扱える ネ
ル
解集合の中から様々なパターンを提案できる ギ
ー 線形座屈耐力
3.解析結果
例題1. 周辺支持モデル 例題2. 隅角部支持モデル
シェル形状図 シェル形状図
4. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
歪エネルギー最小化問題 座屈耐力最大化問題
最大主応力や最大鉛直変位といった 座屈現象は構造材料の強度を
他の力学量が最小化できる 十分発揮することなく
構造物を崩壊に至らしめることがある
高い剛性(軸力抵抗型)を有する
曲面形状を創生し、力学的合理性をもつ 安全性を検討するうえで重要である
全体座屈による崩壊事例
No.1 歪エネルギー最小個体 バカルディ瓶詰工場 No.1 線形座屈1次モード 全体座屈による崩壊事例
5. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
歪エネルギー最小化問題 座屈耐力最大化問題
Object ( x) U N (i) U M (i) U Q (i)
m
一般固有値問題
i 1
([ K L ] [ KG ]) 0
l N
2
U N 0 dx
2 EA [ K L ] : 線形剛性マトリクス [ K G ] : 幾何剛性マトリクス
2
l M : 線形座屈モード
U M 0 dx : 線形座屈荷重係数
2 El 線形座屈荷重
U l Q dx
2
Q 0 2GA
P c P0
m :総部材数、N :軸力、M :曲げモーメント、Q :せん断力 0 c :
P : 基準荷重1次線形座屈荷重係数
E:ヤング係数、l :部材長、A:断面積、I:断面二次モーメント ( の正の最小値)
G:せん断弾性係数、 :形状係数
No.1 歪エネルギー最小個体 バカルディ瓶詰工場 No.1 線形座屈1次モード 全体座屈による崩壊事例
6. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
遺伝的アルゴリズム(Generic Algorithm) 節点座標や部材情報を
00111001
生物の進化に倣った探索アルゴリズム コード化
歪エネルギー:f1 線形座屈耐力:f2 を評価
問題を文字列にコード化
f1:中 f1:小 f1:中
00100100
f2:小 00100110
f2:大 10101010 f2:大
文字列の集団を作る
評価に応じた個体の淘汰
文字列のモデルを評価する
(適合度計算)
00100100 00100110 10101010
評価値に応じた個体の淘汰 遺伝子操作により次世代の集団を生成
遺伝的操作 1011 0010
(交叉・突然変異)により
10110111 1 0 101010 1 1 101010
次世代の 集団 を生成
0010 0111 交叉 突然変異
遺伝的アルゴリズムのフロー
7. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
多目的遺伝的アルゴリズム(Multi-Objective Generic Algorithm)
2つの目的関数を評価し、その目的関数がトレードオフの関係のあるときパレート解集合を探索
パレ―ト解集合→ある目的関数の値を改善するためには
他の目的関数値を改悪せざる得ない解集合
GA探索によって 剛性や座屈安定性が最も高い解 パレート解集合から設計者が
パレート解集合を求める 両者バランスの良い解などがえられる 状況に応じて選択できる幅が広がる
8. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
例題:形態を変数とした自由曲面ラチスシェル
解析条件
GAパラメータ
探索母集団個体数 150
アーカイブ母集団個体数 20
世代数 2000
交叉確率 95%
50m
突然変異確率 0.5~5%
解析条件
形状条件 正方形平面 : 50m×50m
ピン支持 接合条件 剛接合
50m
荷重条件 長期鉛直荷重 1.5kN/m2
解析モデル 変域条件 0≦Z≦15m
制約条件 使用鋼材の許容応力度
断面諸元
部材種名称 d(mm) t (mm ) A (cm 2 ) I (cm 4 ) E=2.05E+05N/mm2,ν =0.3
鋼材定数
格子部材 267 6.0 49.3 4211 ,G=7.94E+05N/mm2
斜材 267 6.0 49.3 4211
E : ヤング係数,ν : ポアソン比
外周材 267 6.0 49.3 4211
G : せん断弾性係数
9. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
線形座屈耐力最大個体 No.2
多目的GA結果 パレート解集合
19000
No.2
↓
18500
歪エネルギー(kN・m)
18000
17500
No.1
17000
↓
16500
3 4 5 6 7
線形座屈荷重係数
小
大
歪エネルギー最小個体 No.1
パレート解例
10. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
パレート解集合の1~3次モードの 線形座屈耐力最大個体 No.2
線形座屈荷重係数の比較
7.5
7
No.2
6.5
線形座屈荷重係数
6
5.5
No.0
5
4.5
1次モード
4
2次モード
3.5
No.1 3次モード
3
0 5 10 15 20
個体番号
歪エネルギー最小個体 No.1
パレート解例
比較個体 No.0
(集合円弧の曲率のシェル)
11. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
形状の変化
比較個体 歪エネルギー最小化問題 座屈耐力最大化問題
No.0 No.1 No.2
代表個体の解析結果
比較個体 No.0 歪エネルギー最小 線形座屈耐力最大
個体 (集合円弧の曲率のシェル) No.1 No.2
総歪エネルギー(kN・m) 75670.08 16753.75 18438.08
線形座屈荷重係数 4.65 3.38 6.53
12. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
非線形性座屈解析の結果
線形解析では把握しきれない力学性状を考慮し,非線形解析時でのパレート解の耐力について考察
する。
最適化形状に弾性座屈解析を行った結果を示す。
代表個体の解析結果
比較個体 No.0 歪エネルギー最小 線形座屈耐力最大
個体 (集合円弧の曲率のシェル) No.1 No.2
線形座屈荷重係数 Λ L1 4.65 3.38 6.53
弾性座屈荷重係数 Λ E 2.01 2.18 3.52
Λ E/Λ L1 0.43 0.64 0.54
14000
弾性座屈耐力最大
12000
10000
8000 比較個体
No.0
P(kN)
6000
歪エネルギー最小
No.1
4000
線形座屈耐力最大
No.2
2000
0
0 5 10 15 20
変位(cm)
13. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
偏載荷重についての考察
非線形性を考慮する上で偏載荷重の影響が大きくなる。
積雪荷重など均等に荷重がかからない場合のシェルの弾性座屈耐力についての考察
偏載荷重
25kN 12.5kN
0-b 0.91
比較個体
37.5kN 0-c 0.894
個体番号-荷重ケース
1-b 0.735
b)軸偏載荷重
b)軸偏載荷重 歪エネルギー最小
1-c 0.738
25kN
37.5kN 2-b 0.792
線形座屈耐力最大
12.5kN
2-c 0.798
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
c)対角偏載荷重
c)対角偏載荷重 b)軸偏載荷重 偏載荷重時の弾性座屈耐力低下率
c)対角偏載荷重
14. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
形状初期不整についての考察
非線形性を考慮すると形状初期不整の影響が大きくなる。
施工誤差など形状が微量に変化した際のシェルの弾性座屈耐力の低下について考察す
る。
初期不整は,線形1~3次座屈モードに比例し,最大5cmとして不整を与える。
0.95
比較個体0 0.948
0.939
個体番号
0.733 モード1
歪エネルギー最小 1 0.843
モード2
0.839
モード3
0.868
線形座屈耐力最大
20 0.929
0.935
0.5 0.55 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1
弾性座屈荷重係数低下率
15. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
結論
• パレート解集合が得られていることを示した。
• 歪エネルギーと線形座屈耐力のトレードオフ性について考察できた。
• 弾性座屈解析でも線形座屈耐力最大個体の耐力が最大になった。
⇒ 本解析は幾何学非線形解析を考慮した際にも有効である。
弾性座屈耐力は線形座屈耐力の約半分になった。
• 偏載荷重時 ⇒ 最大で耐力が約7割程度に下がる
• 形状初期不整を導入 ⇒ 1次モードの不整の影響が大きい 線形座屈耐力最大
最大で耐力が約7割程度に下がる
19000
No.2
↓
18500
歪エネルギー(kN・m)
18000
17500
No.1
17000
↓
16500
3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7
歪エネルギー最小
16. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
結論
• パレート解集合が得られていることを示した。
• 歪エネルギーと線形座屈耐力のトレードオフ性について考察できた。
• 弾性座屈解析でも線形座屈耐力最大個体の耐力が最大になった。
⇒ 本解析は幾何学非線形解析を考慮した際にも有効である。
弾性座屈耐力は線形座屈耐力の約半分になった。
• 偏載荷重時 ⇒ 最大で耐力が約7割程度に下がる
• 形状初期不整を導入 ⇒ 1次モードの不整の影響が大きい
最大で耐力が約7割程度に下がる
代表個体の解析結果
個体 No.0 No.1 No.2
(集合円弧の曲率のシェル) (歪エネルギー最小) (線形座屈耐力最大)
線形座屈荷重係数 Λ L1 4.65 3.38 6.53
弾性座屈荷重係数 Λ E 2.01 2.18 3.52
Λ E/Λ L1 0.43 0.64 0.54
14000
弾性座屈耐力大
12000
10000
8000
P(kN)
比較個体
No.0
6000
歪エネルギー最小
No.1
4000
線形座屈耐力最大
No.2
2000
0
0 5 10 15 20
変位(cm)
17. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
結論
• パレート解集合が得られていることを示した。
• 歪エネルギーと線形座屈耐力のトレードオフ性について考察できた。
• 弾性座屈解析でも線形座屈耐力最大個体の耐力が最大になった。
⇒ 本解析は幾何学非線形解析を考慮した際にも有効である。
弾性座屈耐力は線形座屈耐力の約半分になった。
• 偏載荷重時 ⇒ 最大で耐力が約7割程度に下がる
• 形状初期不整を導入 ⇒ 1次モードの不整の影響が大きい
最大で耐力が約7割程度に下がる
0-b 0.91
比較個体
0-c 0.894
個体番号-荷重ケース
1-b 0.735
歪エネルギー最小
1-c 0.738
2-b 0.792
線形座屈耐力最大
2-c 0.798
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
偏載荷重時の弾性座屈荷重低下率
18. 歪エネルギーと線形座屈耐力 多目的最適化問題 解析結果
結論
• パレート解集合が得られていることを示した。
• 歪エネルギーと線形座屈耐力のトレードオフ性について考察できた。
• 弾性座屈解析でも線形座屈耐力最大個体の耐力が最大になった。
⇒ 本解析は幾何学非線形解析を考慮した際にも有効である。
弾性座屈耐力は線形座屈耐力の約半分になった。
• 偏載荷重時 ⇒ 最大で耐力が約7割程度に下がる。
• 形状初期不整を導入 ⇒ 1次モードの不整の影響が大きい
最大で耐力が約7割程度に下がる
0.95
比較個体0 0.948
0.939
個体番号
0.733 モード1
歪エネルギー最小1 0.843 モード2
0.839
モード3
0.868
線形座屈耐力最大
20 0.929
0.935
0.5 0.55 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1
弾性座屈荷重係数低下率