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世界を変える会社の作り方
スタートアップ期(2 年間)に生じる壁と対策
ブルー・マーリン・パートナーズ代表
シェアーズ代表
山口揚平
早稲田大学政治経済学部卒
トーマツコンサルティング、アーサー・アンダーセン、
デロイト トーマツ コンサルティング、
アビーム M&A コンサルティング シニア・ヴァイス・プレジデントを経て現職
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目次
はじめに
1章 起業前――落ちこぼれ社員から M&A 漬けの日々へ
2 章 違和感――会社は売り買いするものなのか?
3章 起業――3 つの大きな失敗
4 章 人、人、人――大事なのは愛。そして愛。
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――はじめに
この冊子を手にとってくださった方へ。
ありがとうございます。
この小冊子は、2008 年 3 月 1 日に行われた「世界を変える会社の作り方 ~起業 2 年の
走り方~」セミナーの内容を要約したものです。世界を変える会社、という大仰なタイト
ルですが、この趣旨はあとでお伝えします。ここでは、会社とは何か、事業とは何か、お
金とは何かといったことをお話したいと思います。
皆さんの中には、起業されて成功されている方も、これから起業しようという方もいら
っしゃるかもしれません。
私は起業を決意して、行動を起こし、何度も何度も失敗を繰り返して、ようやく 2 年間
を乗り切った新米の経営者です。まだ成功しているわけではありません。ただ私がなぜ起
業をし、何に失敗し、何を学んだのかについて率直にお話することで、皆さんの将来の糧
にしていただければという趣旨でこの小冊子を作りました。
どうぞじっくりとご覧くださいませ。
もしよろしければ、お近くの方に配っていただければ幸いです。
コメントもお待ちしております。
ブルー・マーリン・パートナーズ代表
シェアーズ代表
山口揚平
yy@bluemarl.in
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1 章 起業前――落ちこぼれ社員から M&A 漬けの日々へ
成績は 20 人中 19 番。仕事さえなくて…
まず、起業前の社会人デビュー時期に遡りたいと思います。
社会人になったのは、ちょうど 10 年前。1998 年、大学卒業後、コンサルティング会社に
入りました。コンサルティング会社に入った理由は“就職”したくなかったから。いろん
なことを知りたかったし、自分の人生の選択肢を狭めたくないと思っていました。だから
どうしても“トヨタ”や“ソニー”には行けなかった。一番オルタナティブ(選択肢)が
多いものはなんだろうと考え、コンサルティング会社を選んだのでした。
なんとか入社したまではよかったのですが、最初、全然ついていけませんでした。採用
倍率が 200 倍と高かったこともあり、私からみると同期はあまりにも優秀でした。自分は
経営学のケの字もわからないし、バランスシート(貸借対照表)も読めない。パワーポイ
ント、エクセルも使えませんでした。要するに落ちこぼれでした。
大学時代に奨学金を利用していたこともあり、社会人になったばかりの頃はお金もあり
ませんでした。3 人兄弟なので、みんな勝手に大学に行けという教育方針でした。会社は実
家から遠く、とても通えませんでした。しょうがないので、四畳半の月 3 万円の品川の部
屋に住んでいましたが、風呂は無くトイレは共同でした。にもかかわらず、となりの駐車
場は月 4 万 5000 円でした。停まっているカローラを見て、あの車よりも安いところに自分
は住んでいるんだなぁ、とぼんやり思ったりしました。会社ではついていけないし、お金
もないし、大変な時期でした。
新入社員として 3 か月ぐらい経ったころ、ショッキングな事実を発見しました。何気な
く会社の共有サーバを覗いてみたら、人事のフォルダが出てきました。そこに、新人研修
の評価が出ていたのですが、なんと自分の評価が同期 20 人中の 19 番。これはショックで
した。
たしかに周りはドクター、マスター勢も多かったのですが、でも 20 人中 19 番はないだ
ろうと。20 人の中で 19 位だと、仕事はないわけです。仕事がないのを、この業界では、「ビ
ーチ」といいます。ビーチというのは、暇そうに横になっている、みたいな意味からそう
いうのです。そんなビーチな日々を過ごしているわけだから会社に行ってもやることがな
い。新入社員だから、妙に高いモチベーションで出勤する。でも、会社にいても、ただネ
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ットを見ているような日々。
あるとき、パートナーと呼ばれる会社で一番偉い人が来て、「キミ、ヒマそうだね」と声
を掛けられました。同期は皆、プロジェクトに出ていたので、確かに私だけヒマそうでし
た。その私に向かって「ケーブルテレビ業界について調べてくれ」というのです。私は「わ
かりました!」と即答しました。
“渡りに船”とはこのこと。ホントに必死に調べました。だって、2 か月ぐらいまったく
仕事がなかったのですから。
当時は、自由になるお金はありませんでした。ですが自腹でリサーチセンターに行き、
コピーをとったり、調査をしたり。分析能力なんてないから、ただ調べることくらいしか
できませんでした。3 日間、ほぼ徹夜で調べ上げてファイル 10 冊。400 個ぐらいラベルを
貼り、要約したペーパーをパートナーの机に置いておきました。
パートナーはファイルの存在に気付いて、「あ~、ありがとう」と声を掛けてくださいま
した。でも、後でわかったことなのですが、パートナーにとって「調べてほしい」なんて
話はものすごく小さなこと。トップのパートナーだったら、1 日に 10 回ぐらいスタッフに
言うようなセリフだったのです。たぶん、彼は私が調べた 10 冊のファイルに目を通してな
いんじゃないかな。まだ、あの事務所の倉庫にしまわれていると思います(笑)。
「知りたいのは情報じゃない! 考えろ!」
そんなこんなの日々を送っていたところで、ようやくチャンスが巡ってきます。全国の
自治体の制度に関するリサーチでした。私は、同期のひとりとチームを組んで、北海道の
小樽市から、同期は沖縄の宜野湾市から、かたっぱしから電話して調べ上げました。そこ
でのリサーチ結果が認められ、初めて大きな仕事を任されることになります。それが今後
のキャリアを決定付ける M&A 案件の入り口でした。
ある米国の自動車会社の金融子会社が、日本企業を買収するという案件です。いよいよ
M&A どっぷりの人生がスタートします。
その企業に関する情報をあらゆる部署を回って調べ上げ、作成したファイルは 20 冊ぐら
いにもなりました。積み上げると自分の背丈ほどありました。自分ではよくできたほうだ
と思っていましたが、クライアントの外国人もパートナーも口をそろえてこう言うのです。
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「これは使えない。こんなものを読むわけがないだろう!」と。
とてもショックでした。外国人の方は、典型的なアメリカ人で、ものすごく太っている
くせに、いつもピザを食べながらダイエットコークをガブ飲みしていました。毎日 11 時ぐ
らいに「どうだ?」なんて重役出勤してくるだけでなく、電源コードをひっかけて私のパ
ソコンをひっくり返したり。ものすごく腹立たしいことが山ほどあったんです。でもクラ
イアントだし、自分は英語もしゃべれないし、文句を言いたくても言えなかった。
いろいろガマンしてやってきたことがここで爆発しそうになりました。
「なんだよ、やってられっかよ!」って。
そのとき、クライアントの年配の方が来て言うのです。「違うんだ」と。
「我々が知りたいのは、情報じゃない。情報じゃなくて、この会社を動かしている根本
的なメカニズム、価値の源泉を知りたいんだ」と。そして「この会社の価値はいくらなの
か」。知りたいのはその 2 つだけだと。
“まさに目から鱗。”
考えてみれば、私の大学の卒論なんてネットが普及し始めたばかりのころで、全部コピ
ペの切り貼りのようなものでした。初めて教わったわけです。この仕事で大事なのは「考
える」ということだと。
今でこそ、思考論とか構造化論とか貨幣論についていろんなメディアで執筆させて頂い
ていますが、「考える」ということを知ったのは、このときが初めてでした。
物事を「考える」ということ。考えて「ものの本質」を見抜くということ。
その大切さに気づいてからようやく人並みに仕事が出来るようになったと思います。ど
んなに徹夜して調べてもダメです。因果関係を見抜けなければ価値はありません。たとえ
ば、人事制度と売掛金管理はどう関係しているのか。売掛金管理システムは、どういう思
想で作られているのか。その思想は、会社の文化にどう根ざしているのか。その文化は、
われわれの会社とどう関係があって、どうシナジー(相乗効果)してくるものなのか。それ
らがクライアントの知りたいことでした。
システムの背景にある思想、思想の背景にある根本的な信念や哲学まで掘り下げた上で、
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表出している現象を見なければなりません。そういう本質的なことから考えるという作業
を丁寧に始めるようになって、ようやく仕事らしい仕事ができるようになりました。見え
ないものを見る力、それこそが考える力というものだと認識することができました。
トントン拍子で M&A 時代を謳歌
考える大切さを学んでからは、順調そのものでした。上司の転職を機に、アーサー・ア
ンダーセンに入社。そこで某巨大複合施設の再生プロジェクトに携わります。その後、デ
ロイト・トーマツに戻り、M&A ファームの設立に参画。某巨大複合企業や巨大小売業の再建
に、チームとして携わります。
複合施設の案件ではいろんなことを学びました。関わったのは、ハゲタカ(破綻証券投資
戦略)ファンド論議を巻き起こした、とある有名なファンド会社の人たち。いわゆる超エリ
ートの方々で、下っ端連中とは普段は目も合わせません。でも、ワーキング・キャピタル
(運転資金)とは何なのか、財務の知識などなど、たくさんのことを教えてもらいました。
今から考えると本当に何も知らなかったのだと思います。
某巨大複合企業の案件では、初めて分析のチームリーダーを務めました。とてつもなく
大きく、タフな再生プロジェクトでした。
M&A の分析には、ものすごいスピードが要求されます。話が立ち上がったら、各チームの
トップがすぐに集まり、みんなで、何を考えるかについてディスカッションします。その
後、「チームアップ」といって、会計士、弁護士、保険数理士、業界のスペシャリストたち
が結集。まるでウィルスに感染するようなスピードで、クライアントとのアポイントメン
トが入ってきます。すごい速さでエクセルの表が細かく、小さくなっていきます。「関数が
崩れるからエクセルを触るな!」と号令が飛ぶ。朝 5 時まで分析して、取っ組み合いのケ
ンカをするぐらいの勢いで議論をしていました・・・。
コンサルティング会社は、完全にフェア。何を言うかが大事で、誰が言うかは問われま
せん。必死でした。でも、とても楽しかった。オーケストラのように、チーム一人ひとり
が自らの役割に従事し、全体に折り重なって形となっていく。みんなで一体となって価値
を創造していく醍醐味を味わいました。
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2 章 違和感から起業へ――会社は売り買いするものなのか?
違和感からウツ病を患い…
しかし、少しずつ違和感を覚え始めていたのも事実でした。自分がやってきたこと、本
当にやりたかったことは何か? 日本政府や日本企業を相手に、いわゆる“ガイシ”の手
先として株主資本主義を推進することなのか?
子どものころ、純粋に会社は社長のものだと思っていました。でも、M&A の世界では別の
答えを教えられました。「会社はキャッシュマシーンに過ぎない」と。
「キャッシュを生まないこのドームをどうして閉じないのか?」
再生企業の取締役がずらーっと並んでいる前にファンドの人が 3~4 人いて、こう問いか
ける。私たちはファンドの後ろでそのセリフを聞いていたわけですが、そもそも「会社っ
て売買していいものなのか?」と不思議でなりませんでした。
この企業はもともと三セク(第三セクター)で、その地域出身の人が地元を活性化した
いという思いで作ったものでした。子どもたちに楽しく遊んでほしいというのが本質。そ
こにおけるキャッシュは血液。そこには意識、信念が通っているはずです。でも、本質的
なものは何も議論されませんでした。非常に違和感を覚えました。
当時はまだ若く、上司からほめられることが何よりうれしい年齢でした。上司がほめて
くれる。皆で美味しいものを食べにいく。それはそれでうれしい。だから一生懸命働きま
した。しかし、そんな環境も次第にカラダに合わなくなってくるわけです。グチが口をつ
いて出るようになってきて、毎日毎日、本当に疲れていました。人の物質的欲求なんてた
いしたことないのに、お金を持ってハッピーリタイヤしたほうがいいなんて考えたりもし
ました。
そんなことをせこく考えるようになったからなのか、その頃から体調も崩れてきて、い
わゆる、今言うところのウツ病になってしまいました。毎日 3 時間ぐらいしか寝ることが
できないし、血尿もでるし、薬が手放せない状態でした。ヘタなエリート意識を持ってい
たのも厄介でした。「こんな屈辱はない」などといつも考えていました。
週末になると、自転車で新宿御苑に行って、「自分は何を使命に生きているのか」などと
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哲学的なことをぼんやり考える日々が続きました。
ATM で 30 万円ぐらい引き出して旅行代理店に直行し、明日からどこかに行きたいと言っ
たこともありました。でも明日からなんて行けるところはないし、パスポートも切れてい
ることがわかって、そのときは行けませんでした。
でも、会社員を辞める直前の 2005 年、タイのピピ島に逃亡しました。数日泊まって、成
田に着いた次の日、タイで大規模な洪水があって泊まっていたホテルが流されたんです。
「これは何かある」と、何かちょっと運命的なものを感じました。そのころ、とりあえず
会社を辞めたくて仕方がなかったわけですが、背中を押してくれるメッセージにも思えま
した。
お金以外のコミュニケーションツールがあるはず
金融会社が言うところの会社は確かに「キャッシュマシーン」であり、魂を持たない自
動販売機です。
しかし、会社という法人は、ロジック(論理)だけで割り切れるものではなく、それぞれ臭
いがあり、カネで計れる以外の価値があります。会社は経済体であると同時に、小さなコ
ミュニティ(共同体)です。そして共同体は、違うルールやプロトコル(通信規約)でコミュ
ニケーションしています。それをキャッシュで売ったり買ったりするのが、私の違和感の
本質でした。
そうこうしているうちに、社会におけるコミュニケーションの方法を、もう少し深遠で
価値があり、有効なものに変えていきたいという思いが出てきました。
貨幣はもともと人と人とのコミュニケーションツールにすぎません。それが価値保存機
能とか、いくつかの信用創造機能をもつことで、現実から乖離してきたというのが、金融
資本主義の帰結。みんなお金が欲しいが、お金は物質の象徴でしかない・・・。
M&A のキャリアを通して、自分は思考論、つまり、考えるということを教えてもらった
と同時に、徹底的な金融資本主義というものを見せつけられもしました。
この 2 つがトリガーとなって、貨幣とは何か、M&A とは何か、会社とは何かについて考
えるようになり、違和感のなかで病気にもなり、そんな状況で今の会社を立ち上げたとい
うのが、起業にいたる経緯です。
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ブルー・マーリン・パートナーズを企画会社として設立し、金融情報事業としてシェア
ーズを立ち上げましたが、私たちは、投資家を儲けさせることを第一の目的とする投資顧
問ではありません。正確で的確な知識と情報を広く流通させることを重視しています。
投資家が儲かればいいとは思います。しかし、会社というのは、本質的に社会に価値を
生み出す創造体です。自分が投資をする会社があって、その会社が上場して価値を生み出
して、その価値がバックされて自分に返ってくる。そういうフローに参画する形での投資
は、ただ儲かるだけの投資より、ずっと価値があると思うのです。
現在行われている投資の多くは、株価の上下を予測しその売買を通して利ざやを得るこ
とを目的としています。それは誰かが得をすれば、誰かが損をするというゼロサムゲーム
にすぎません。そんなゲームをやっているヒマは人生にはないはずです。
株価が上がろうか、サブプライムローン問題が起ころうがそんなことは関係無いわけで
す。「私はこの会社が好きだ」という思いが投資家の根底にあるとき、資本主義は温かみを
もって機能しはじめるのです。
では、好きになるということはどういうことかというと、その答えにはまず「理解」が
あると思います。何を理解するのかというと、株価ではなく、企業そのものでしょう。だ
から私たちシェアーズは企業情報の流通を行うのです。
「意味の時代」に目指すべきもの
シェアーズは、現在、バリュエーションマトリクスという銘柄分析システムを開発・提
供していますが、私たちの当面の目標の 1 つは、有価証券報告書を完全にビジュアライズ
(可視化)することです。
私たちはすべての会社の過去数十年にわたる詳細な財務データをもっています。それを
持っている独立系の金融サービス企業は日本では私たちの会社だけです。
確かに今後、XBRL(財務諸表記述言語)などの利用によりデータの入手は容易になるでし
ょうが、入手できる財務データは限られています。それに残念なことに、世界の富は、情
報格差が生み出すものだから、みんなが XBRL を取れるようになるということは、財務情
報の価値がなくなるということです。これが完全市場経済の原則です。
そうなるともっと深遠な企業を理解する情報が必要になってきます。そこに私たちの出
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番があるのではないかと思って、さらに深い企業分析データベースを構築中です。
儲けるとか儲けないとかいうよりは、企業カタログ、銘柄カルテを生成しています。忙
しいサラリーマンでも片手間のなかで企業の何かを理解し、投資するためのツールを、多
くの人に提供したいという思いがあります。
そもそも、シェアーズで目指そうと思うのは、知識と情報を世界の多くの人たちと分か
ち合うことです。
私は大学時代の論文の一行に、「情報化社会の本質は、情報が価値を持たないということ」
と書きました。私たちは情報ではなく、人々に具体的な意味を提供しなければなりません。
情報ではなくて意味です。意味というのは、個性的で個別的なもの。人によって異なる
もの。だからこそ面白いのです。
情報化社会の 1980 年代までは、インフラの時代でした。NTT や AT&T が活躍し、その
成功のカギは巨額の資本投下やネットワーク構築力だったりしました。
1990 年代になると、彼らはほとんど役割を終えてきて、情報の時代に入りました。そこ
で活躍したのがグーグル、ヤフー、アマゾン。グーグルは、もちろんページランクのしく
みも優れていますが、本質は情報を集めることだったと思います。そしてこれらの会社も、
いずれ役割を終えると思います。
今、グーグルからスピンオフして立ち上げている会社がたくさんあります。彼らは最初
から大金持ちですが、これまでとは違う世界、つまり「意味の世界」を作ろうとしています。
私たちは、その「意味の時代」の黎明期を迎える世代になると思います。意味の時代にお
いては、それぞれの目的に対して適切なフレームワーク(切り口)を与える力が必要とな
るだろうと思います。
「意味の時代」のプロジェクトとして、私たちシェアーズは「バリュエーションマトリ
クス」を提案しています。
バリュエーションマトリクスは、企業価値をワンクリックで算出するツールです。企業
価値評価におけるディスカウントキャッシュフローの仕組みを知っていても、それに必要
な財務やベータ値の情報がなければ、答え(バリュー)がわからない。そこで、「仕組み」
と「情報」をセットで提供しよう、というわけです。忙しいサラリーマンでも、仕事の合
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間に気になる会社を理解し、投資ができるようなツールを提供したいと考えたのです。
グーグルのページランクには、汎用性はありますが専門性はありません。投資や金融業
界では、フィナンシャルならではの専門性(切り口)が求められます。それに応えるのが
バリュエーションマトリクスであり、我々が提供していこうと考えているものです。
インフラの時代 “情報”の時代
プレーヤー
NTT
AT&T
Google
Yahoo!
Aamazon
• 巨額の資本
投下
• ネットワーク
構築力
成功の
鍵
• 情報収集力とイ
ンデックス化
• スピード
• 目的に対して適切な
切り口(フレームワー
ク)を与える力
• 普遍性/応用可能性
• 信用力
• 伝え方の軽妙さ
~1980 ~2000
“意味”の時代
© 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved.
基本的なコンセプト
情報化社会の本質は、情報が価値を持たないということです。
私たちは、情報ではなく、人々に具体的な意味を提供します。
図 1
社会全体で「切り口」を分かち合う
実は、私たちが日々行なっているコンサルティング業務も、「切り口」を提供するビジネ
スです。
たとえば、現在、あるクライアントの元に週 1 回通っています。そこでは朝 9 時から 5
時まで、1 時間ずつ、さまざまな部署の人たちとのミーティングを実施します。毎回、製造
部門、販売部門などの担当者が代わる代わるやってきて、抱えている問題を提起します。
我々は、それらの問題を「なるほど」と聞きます。しかし、答えは提供しません。むし
ろそれはできません。提供できるのは、問題について何をどう考えるべきかの切り口、す
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なわち論点です。たとえば、工場の再編の話が出たとします。すると私たちは、「では、イ
ニシャルコスト、ランニングコスト、工数、外部および内部的なリスク、一時的なしのぎ
をするためのフォローオペレーションを考えなければなりませんね。」といった話をします。
考えるべき論点を挙げるのです。
具体的にはどうするか。複数のプランを提供します。そのなかでどのプランが良いか。
仮説を提示し、次の週までに検証をします。次のミーティングで、「このプランで再編しま
しょう。」と決まります。しかし、部長が首をタテにふらない。新しい問題が生まれます。
では、部長のアジェンダ(検討課題)は何なのか。個人的なアジェンダ、あるいは組織
内の利害関係はどうなのか。論点と選択肢を煮詰めていきます。プランを実施するのに、
障壁となる新たな問題点をさらに検証します。検証作業のくり返しによって、クライアン
トが抱える問題を小さくしていくわけです。
問題解決とは、問題を“消滅”させることではなく、“小さくして咀嚼しやすくすること”
です。
こうしたサービス、ビジネスを、エンジニアリングの力を借り、多くの人とシェアした
いと私たちは思っています。コンサルティング業務で 1 つの会社の価値を追及するのもい
いと思います。けれど、より広い社会全体で「切り口」を分かち合うほうが、よりハッピ
ーだと思うのです。
「切り口を分かち合う」ことについては、ぜひみなさんにも考えてほしいです。
どんなアイデアが考えられるでしょうか?
たとえば、アマゾンにおける「知の相関図」というのはどうでしょう。
私の本の読み方はちょっと変わっています。ベッドの横に、いろいろなジャンルの本が
いっぱい伏せてあって、1 章ごとに読んでいくんです。分野も経済学や金融、社会心理学、
哲学などバラバラ。それらを並行して読み、学際的に考えるようにしています。なぜなら、
問題は横断的に起こるからです。たとえば、M&A は、システムやコンプライアンス(法令遵
守)、IR などあらゆる要素を含んでいます。全体を包括的に見なければなりません。よって、
分野が偏らないよう、横断的な読書を心がけているわけです。
読んでいる本に紹介されている本を読む、ということもよくあります。いわば“芋づる
式読書”ですが、これをアマゾンで体系化できないものか、と。
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複数の本の「関係性と重要性を変数で表すマップ」があるといいなと、考えるわけです。
関係性は、どのレビュアーが同じ本をレビューしているかなどの情報からはかることがで
きるだろうし、重要性はランキングから計測できます。情報を構造化し、意味に変換する
一例ですね。
あるいは、今やっているのは先ほども述べた有価証券報告書の完全ビジュアライゼーシ
ョン(可視化)。有価証券報告書なんて、正直読む気がしません。でも、それが本や DVD を
“ジャケ買い”するように、パッと見た目で判断できればいいな、と。たとえば、監査法
人の判子の押し方で、悪い会社かどうかがわかるとか(笑)。情報を意味あるものに可視化
するビジネスです。
ほかにもあります。
たとえば「歴史マップ」。世界地図があり、その上にバーがあって、紀元前 500 万年前の
バーを動かすと、世界の様相が変わって見えるというしくみはどうでしょう。クリミア戦
争とマリーアントワネットの処刑とアメリカ独立戦争がどのように有機的につながってい
るのかが一目でわかるというしくみです。
六法全書だって、スキャンニングして可視化できれば、もっと法律が身近なものになる
のではないでしょうか。
考えるだけでも楽しいし、実現すればもっと楽しい。こういう「知の流通ファーム」こ
そ、シェアーズが目指している方向です。
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3 章 起業――3 つの大きな失敗
会社を設立したものの…
話を私の起業ヒストリーに戻します。
2002 年ぐらいから少しずつ違和感を覚え始めていた話はすでにしました。そのころから
何か自分でできないかと模索し始めました。ブログを書き始め、2005 年 4 月には本を出版
しました。「なぜか日本人が知らなかった新しい株の本」(ランダムハウス講談社)という
書名で、2005 年のベストセラーにもなりました。
そして、「知の流通ファーム」という構想を元に、2006 年 1 月、ブルー・マーリン・パー
トナーズを設立します。
設立したといっても、体調は芳しくなく、当初は週 3~4 日働けばいいほうでした。それ
でも、セミナーを実施し、DVD を販売し、バリュエーションマトリクス(企業価値評価ツー
ル)をリリースすることができました。しかしそれほど成功していたわけではありません。
生活はなんとかなっても、会社のお金はどんどん減ってゆく。2 年間は何も上手くいかなか
ったな、というのが正直な感想です。
では、何をどう失敗してきたのか。例を挙げれば数知れないのですが、大きくわけると 3
つあります。
1 つめの失敗は、なんでもかんでも自分でやろうとしたことです。経理も総務も営業もな
んでも。よく考えると、どれも私の得意分野ではありませんでした。その事実を素直に認
め、手放すことができなかったので、いつもバタバタしていました。
ビジネスで肝要なのは“外部化”がいかにできるかだと思います。しかし「手放す」こ
とはとても勇気のいる心的作業であり、経験と失敗に基づく気づきの連続による、人間的
な成熟が必要です。
2 つめの失敗は“人”でした。前の会社時代の同期や大学時代の後輩がいろいろと助けて
くれたものの、何人かは去っていきました。余裕のない中、ストレスを抱えながら仲間と
ビジネスをやってもうまくいきません。自分の夢ばかり追いかけて、人の気持ちを考えて
いなかったのが敗因です。また、哲学・真理の追求ではなく、他者・人間・現実に焦点を
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当てて日々を送るようにしたほうが結果的にうまくいく気がします。
3 つめの失敗は、商品(バリュエーションマトリクス)を証券会社に提供するまでに時間
がかかったことです。これは致命的でした。商品力ではなく、“動機”が招いた販売力の失
敗です。
最大の敗因はプライドとエゴ
失敗から学んだ“外部化”、“人”、“動機”の大切さについては後述するとして、そもそ
も幾多の失敗の根源は何だったのかについてお話します。
それは自分自身のプライドとエゴに尽きます。M&A の仕事をやっていたときのヘタなエリ
ート意識こそが最大の障壁でした。
例えば、今私たちがオフィスを構えている「ちよだプラットフォームスクウェア」。SOHO
(Small office home office:小規模事業所)をやっている人たちがいっぱい入っていま
すが、オフィスは広くはありません。千代田区から払い下げたパイプイスが並べられ、机
もどこかの課長の机で、引き出しに昔の人事名簿がまだ入ったままの状態だったり…。
コンサル時代の同期で、ずっと私の事業やプロジェクトを支えてきてくれたパートナー
と、オフィスを構えたときに撮った写真があります。その写真の私の表情は苦笑いです。
写真からは「ぶっちゃけ、こんな所、居られないよ!」という気持ちがにじみ出ています。
苦笑いの表情通り、「ここから一刻も早く出たい!」と思っていました。周りの SOHO の人
たちを見下していたというか、「自分は違うんだ」と考えていたふしがありました。
コンサル業界にどっぷり浸かって、ハイレベルな経営課題を扱い、トップマネジメント
との接点を持ち、一般より高めのサラリーを 8 年間ももらっていたら、エリート意識が染
みついてしまいます。そしてそれが創り出すのは本当に小さな世界観。ここから早く脱却
しなければなりません。エゴという名の小さな自己は、物事をストップさせる最大の壁に
なります。
モノを売る“動機”の話につながりますが、知識やスキルがあっても、それだけでは上
手くいきません。それは、ハートを含めた本当の「賢さ」にはかなわないのです。
私が以前在籍していたアーサー・アンダーセンの事件を例に挙げます。この 100 年の伝
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統を持つ会計事務所は、2002 年のかの有名なエンロン事件で淘汰された会社ですが、その
エンロンの CEO(最高経営責任者)でジェフリー・スキリングという人物がいます。
彼は、マッキンゼーからハーバードの MBA に入学する面接でこう聞かれました。
「ところで、君は頭がいいのか?」と。
彼の答えはこうでした。
「I’m fucking smart!(とびっきり!)」。
しかし、その後の顛末はみなさんがご存知の通り。巨額の企業詐欺に手を染め、逮捕さ
れます。“動機”が不純だと長期では決してワークしません。バリュエーションマトリクス
を販売してきた自分の経験からも言えることです。
売るものは「社会的価値」
では“動機”とはどうあるべきものなのか。ここからは、起業・事業のあるべき姿、噴
出する諸問題に対する、実際の対策もあわせて紹介していきます。
Value(
社
会
価
値
)**
大
小
小 大Mission(使命、授かる物)*
*Mission Oriendedであるということは、
Efficientであり、Effectiveであるということ
**ValueはPriceでもある
Vision
個人
独
立
事
業
企業(法人)
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会社とは?事業とは?
会社はヴィジョンを目指し、かつ社会価値の創造と個人個人のミッションを満たすためにある。
事業とはヴィジョンを目指すための手段である。
図 2
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図 2 をご覧ください。縦軸の「Value(社会価値)」。まさにこれが“動機”とするべきも
の。社会的価値をどう売るのかを、いついかなるときも徹底的に追求しなければなりませ
ん。
シェアーズと社会的価値との関係はどうあるべきか。シェアーズが持っているバリュー
は何なのかを考え、行動しなければならないわけです。エゴで立ち回ると上手くいきませ
ん。
エゴとは小さな自己の動機です。ここから抜け出したい。人から尊敬されたい。お金が
欲しい。まさに創業当初、呪縛されていた負の感情です。商品が売れなかった、というよ
り営業の機会さえ与えてもらえなかった(話を聞いてもらえなかった)、最大の原因でした。
どうしたら自分の「分け前」が増えるか。どう高く売るか。そのことばかり考えていまし
た。
ものすごく欠乏欲求がありました。やましい動機や感情は相手に伝わるもののようで、
まったく上手くいきませんでした。
社会的価値から割り戻して価格(プライシング)を考える。純粋に相手にとってどうい
う価値があるのかを考え、提案するようになってから、反応が変わってきました。話を聞
いてもらえるようになったのです。
相手目線という言葉は単純だけれど、その視点を持ってからの交渉は順調。商品の中身
はまったく変わっていないのに…。
人間はエゴ(小さな自己)とエヴァ(大いなる自己)を持っていて、その葛藤の中で生
きているものです。エゴをどう「デトックス」するか。経営者は徹底してエゴデトックス
をしなければなりません。
経営者の頭の中が一番のコストだと誰かが言っていましたが、私は「経営者のハート」
が一番のコストだと思います。経営者のハートは、前提として、「世界中のすべての人々に
とって価値のあるもの」でないといけない。説教的ですが、経験則に基づく私の理解です。
バリューとミッションとヴィジョン
会社は、本質的に社会価値を創造する組織体です。そこに加わる要素が個人個人のミッ
ションです。図 2 の横軸にあたるものです。ミッションは、自己の内面を見つめると降っ
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てくる。「あなたはこれ、あなたはこれ」というふうに。
ミッションは、誰もが授かるものです。そして、それは自分の内面に見つけるものです。
この世界では、誰もが世界で唯一の「ピース」を担っていて、ほかの人の「ピース」とは
重ならないのです。そうやってこの世界という「ジグソーパズル」はできています。名目
上は税理士だったり、弁護士だったりと重なりますが、究極的には重なりません。
世界における一番重要な認識は、「幸福の無限性」だと思います。富や幸福に、奪い合う
ものはないということです。それは自ら創り出すものです。金も奪い合うものではない。
足りないという視点に立ったとき、幸福はおのずと遠ざかります。自分には自分のミッシ
ョンとバリューがあります。この認識こそが本当の自己の確立なのだと思います。
経営者としての仕事の本質は、自己を含め組織に関わる人々の個別のミッションを把握
することだと思います。それを組織の経営資源として「有機化する」ことこそ、マネジメ
ントの定義ではないでしょうか。
では、私自身のミッション、つまり使命は何だったのか。
それは、「知の構造化・有機化によって、世界がすべてつながっている 1 つの存在である
ことを証明すること」だと自覚しています。
その基本となっている考え方が、「メタ思考」だと思っています。メタ思考とは、一見、
無関係の複数の現象に対し、その深いレベルで、共通性、有用性を見出す思考力のことで
す。たとえば、倫理と経済にはどういう因果関係があるのか、そこに共通性を見出す力の
ことです。これは曖昧かもしれませんが、自分の中では明確になっている概念です。
このような私のミッションから、「切り口」を分かち合うことをミッションとする、「知
の流通ファーム」としてのシェアーズが誕生したのです。
動機としての社会的価値の追求と、強みとしてのミッションの交点に「ヴィジョン」が
あります。
シェアーズは今、金融事業として「100 万人に正しい知識と情報を正確に伝える」という
ミッションを持っています。さらにもう少し大きなヴィジョンが、末端価格 2 兆円の知の
流通ファームの創造です。それが、シェアーズが目指す具体的・最終的な姿です。
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ヴィジョンには個人ベースのものもあるし、法人ベースのものもあります。個人として
それを目指すことが「独立」。法人化してそれを目指すことを「事業」といいます。
このフレームワークにおいては、すべての経験、知識、人、モノ、カネという経営資源
は手段にすぎません。事業というのは、ヴィジョンへの道のりを歩む「過程」と定義され
ます。その意味では、事業は決してエコノミックなもの(経済的行為)でなくてもいいわ
けです。ビジネスを常に経済的行為と考えるのはナンセンスだと思うのです。
実は、世界の共通理解とオペレーションは、経済から離脱しつつあると考えています。
経済とは何かと定義すると、それは貨幣を中心とするコミュニケーションネットワークと
なります。けれど経済的な欲求というのは、究極的に追求すべきハピネス(幸福)の、1 つ
の従属変数に過ぎません。つまり、ほかにもハピネスの変数はあるということです。
たとえば、ブータンでは、GNP(国民総生産)の代わりに GNH(国民総幸福指数)を国家
運営の指標にしています。わが国もかつてはそうでした。日本は社会主義と資本主義の「合
いの子」のようなバランスの上でうまく機能していました。
そもそも島国共同体の日本がエコノミックな世界に引きずられたのも、アングロサクソ
ン的な多様民族国家におけるコミュニケーションの必然性から来ています。元々、日本で
求められていたハピネス(幸福)のあり方は、経済的価値一辺倒ではなかったはずです。
最近、社会的企業家(社会にどれだけの強い効果を与えられたかを成功の尺度にしている
企業家)がブームのように言われていますが、新しいものでも特別なものでもないと私は
思います。
売上も大事な指標であるけれど、果たして売上が大きい会社が社会的価値を創造してい
るかどうか。常に問う必要があるのではないでしょうか。
ポスト XBRL、ポストグーグルを目指す
では、価値とはどうあるべきか。表題の「世界を変える会社」につながる部分です。
Web、IT 関連で独立する時に究極的に考えなければならないのは、「なぜグーグルじゃい
けないのか。なぜ自分はグーグルに入社しないのか」ということです。それに答えられな
いのであれば、その動機はエゴだと思います。独立心のほとんどはエゴですが、その動機
ではうまくいきません。
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ベンチャーの前提は、「新しい価値を創造すること」。そのためには、志が高くなければ
ならないのだと思います。志の高さは時間軸に比例するものです。ベンチャーと大企業で
はケーパビリティ(能力)がまったく違います。資本力、実行力でかなわないのだから、よ
り長期を見据えなければならないというのが当たり前の現実です。つまり、ベンチャーは
大企業に、すらりと、「それいいね」と受け入れられるようなことを言っていては、ダメと
いうことではないでしょうか。
恐らく私らが掲げる「有価証券報告書・六法全書・世界の歴史の完全ビジュアライズ化」
という考え方は、時間軸としては少し先のものかもしれません。ただ、大企業が XBRL を採
用している時代に、私たちが同じように XBRL をやっていてはかなわないわけです。
ベンチャーは、ポスト XBRL、ポストグーグルの世界を生きなければならない。
情報がすべて揃う時代に、どういうふうに「意味」に変換するか。そこを考えなければ、
価値はないのです。物事を見る時間軸の長さがモノを言います。
ハーバードの調査で、卒業生の経済的な価値を決める決定的な要素は何か、というもの
がありましたが、20 年間の分析した結果、その要素はひとつしかなかった。それは、物事
を見る「時間軸の長さ」だけでした。ベンチャーは、より長期で物事を見る必要があると
いうことです。
あとは「ロマンとそろばんのバランス」も大事です。いやらしい話かもしれませんが「夢
を語ることによるコストの繰り延べ」という考え方があります。具体的にはストックオプ
ションです。資本力の乏しさを長期で補填していくという意味で、現実的な考え方といえ
ます。シェアーズはまだストックオプションを発行していませんが、長期のヴィジョンに
コミットするメンバーには、少しずつ株式を保有してもらいたいと思っています。
経営者とは、「ヴィジョンの守り主」兼「会社の管理人」。ストックを保有するとは、創
業者利益を確保する、という以前にこのような意味があるのだと思います。
すべては“外部化”できる
さて、いきなりものすごく細かい話ですが、スタートアップの実務的な話をします。先
に触れた“外部化”の大切さにつながる話です。
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まず、ホームページを作る際に役立つのが「Color Me Shop!」。安く柔軟性のある物販サ
イトが作れます。「イーバンク」は振り込みコスト低減に有効です。なんと 1 回 150 円です。
しかし会社は都市銀行に口座を開設しなければなりません。そこで電子決済すると 750 円
かかります。そこで、2 つ口座をつくって、都市銀行は入金口座にしてイーバンクは出金口
座にすれば、コストを低減させることができます。
会社をつくる際は、行政書士にお願いするべきです。15 万円でできます。最初は、エゴ
もあるし、お金もないから、自分でやろうとしてしまいますが、基本の方針は外部化です。
外部化を恐れてはいけません。外部化を嫌がるのは無知とエゴからくる考えです。強み以
外は、すべてアウトソーシングする心持ちが大事です。それが単なる個人事業主になるか、
会社をつくるかを分けていきます。
もちろん税理士は絶対に雇うべきです。税金対策は、長期では価値がありません。それ
より本業での価値創造を徹底的に考えたほうが効率的です。税金対策のために会社をやる
のは、本当にやめたほうがいいと思います。絶対に IPO を目指すべきです。それも IPO と
いう目標のために目指すのではなく、自分の会社を社会的存在にするためにやる。本質的
な意味で、「パブリックオファリング」をする(公に問う)ということです。税金対策で会
社をやるんだったら、もっとコストを下げる方法はあります。またグレーゾーンの会計処
理もやめたほうがいいです。そういう生き方は幸せにはつながりません。
あとは電話秘書と「とらば~ゆ」の利用です。人を採用する際は、仲間に声をかけるの
ではなく、マーケットから調達したほうがいいです。案外、友人と事業をするのはコミュ
ニケーションコストがかかるものです。採用コストは 10 万円程度みておいたほうが良いで
しょう。より良い人材を求めるなら、コストをかけるべきです。また、事務所は、やっぱ
り「ちよだプラットフォームスクウェア」です。見栄を張って、高い事務所を借りると後
が大変です(笑)。
ひとつ言っておきたいのは、最初に借入だけはしないこと。会社員で起業資金が貯まっ
ていない人は、まだ会社でやるべきことがあるというメッセージかも知れません。今は 1
円でも起業可能ですが、昔、株式会社を作るのに資本金 1,000 万円が必要だったのには、
それなりの理由があったのではないでしょうか。起業の敷居を制度的に下げるのは、本質
的ではないと考えます。
エースからリーダーを目指す
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「無知とエゴ」の話に関連し、もうひとつ言っておきたいのは、経営者として目指すべ
き人間像についてです。
大前提として言っておきたいのは、会社を辞める人は、会社のエースでなければなりま
せん(自分のことは棚に上げて申し上げるのですが・・・)。つまり、会社員として「桁違い」
に優秀じゃなければ、独立するべきではありません。今の環境で、優秀でなければ世界を
変えるようなことはできません。会社がイヤで辞めるというのではダメです。独立前に目
指すべきは、会社のエースです。スキルを磨き、卓越した成果を出さなければなりません。
20 代~35 才ぐらいまではスキルを拡充する時期だと思います。
ただし、独立後はスキルだけではダメです。愛、つまり思いやりが必要となります。人
間としての器です。それがあると会社は大きくなれます。
エースからリーダーを目指さなければならない。リーダーは、リードをするのであって、
自分でやるのは非常に難しいことです。自分でやろうと考えるのは無知とエゴの諸産物で
す。歴史を振り返ってみても、事を成す人は、物事を任せることができる人です。ローマ
のアウグストゥス(オクタビアヌス)は、ローマの優れた皇帝といわれ、シーザーと並ん
で有名ですが、彼は病気がちでほとんど戦場でも戦うことができなかったそうです。だか
らいつもテントの中にいました。その分、人を使うのがすごく上手く尊敬されていました。
松下幸之助しかり、成功者には病弱な人が案外多い。なまじスキルと体力があると、自分
でやって自分が一番だと思ってしまう。これが優秀なエースの最大の罠かもしれません。
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スキル
• 10代~20代に
目指す方向性
は、「エース」
クラス *愛とは、「思いやり」であったり、
「人に多くのインセンティブを与える事」である
• 独立後(30歳以降)
は「愛」に対しての
理解と実践により、
より幅が広く、深い
人間(リーダー)を
目指す
大
大小
愛*
辿るべきキャリアルート
エースからリーダーへ
スキルではなく、愛(器)が求められる。
時間器の大きさ
愛
スキル
長
大
軸を変えてみると・・・
図 3
キャッシュフローとヴィジョンのバランス
経営者に求められるもうひとつの要素は、バランスです。
「キャッシュフローとヴィジョンとの整合性」というバランスをとらなければなりませ
ん。会社である限り、稼がなければならないし、ヴィジョンとの兼ね合いも考えねばなり
ません。頼まれた仕事を何でもやるのではダメです。そして、カネになるからやるという
のでもダメです。カネにならないからやらないというのもダメです。ヴィジョンとの整合
を考えながら、長期、短期でキャッシュフローを考えることが大事です。そのバランスが
ムズカシイのだと思います。それを意識して事業ポートフォリオを創らないといけないと
いうことです。
ただ、個人的視点での意思決定の最後の決め手は、“思いやり”というか、“ハート”。
頼まれたら、「仕方ない! やるしかない!」という場面もあります。そういった“愛”が
長期で効いてくることもあるのではないかと考えています。
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SShareshares
(B to C)
B to BB to B
コンサルティング
企業
研修
ビ
ジ
ョ
ン
と
の
整
合
性
大
大小
キャッシュフロー
事業ポートフォリオ
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ビジョンと短期のキャッシュフローのバランスを取りつつ、一番やりたい方向へ向かう。
1から育てるということとバランス
図 4
「仕入れと販売」のバランスをとる
もうひとつ、バランスを取らなければならないのは、「仕入れと販売」です。私たちの場
合の仕入れは、大半が人と情報になります。それらの切片と傾きをどうするかを考えなけ
ればならない。つまり、どう仕入れて、どう売るかです。
人の仕入れコストを抑えるなら、インターンで雇う、時給制にする、あるいは成果報酬
型にするというやり方もあります。売上の伸びに応じて、仕入れを考え、利益を調整する
わけです。
ただ、ここで言いたいのは「利益が出たから万歳!」ではないということです。事業が
ヴィジョンへの道のりと考えると、利益=設備投資コストでなければなりません。利益を
投資し、次の事業に回し、ヴィジョンに近づいていかなければなりません。
利益しか見ていない人が多いようです。利益は単なる中間地点であって、利益は所詮、
フローを期間で切ったものにすぎないのです。フローは永遠に続いていくものです。利益
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が出てもそれで終わりではないということを、是非、認識してほしいと思います。
仕入れ 販売
価値付加
スキーム
仕入れ価格より
販売価格の傾きを高くする
仕入れを固定にするが、
販売も仕入れ価格以上の
固定に設定し安定を狙う
仕入れの傾き < 販売の傾き
仕入れの切片 < 販売の切片
仕入れを固定にするが、
販売はその固定費以上の切片
と、傾きを設定する
仕入れの切片 < 販売の切片+傾き
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仕入れと販売のバランスをとる(Y=ax+b)
事業には「仕入れ」と「販売」があることである。「傾き」と「切片」をいつも意識してバランスを
取りながら価値を乗せるという事を実施する。
図 5
資本政策についても、多少触れます。会社設立は資本金で賄います。その後、製品やサ
ービスをリリースしていきます。そこで、会社の価値(バリュエーション)が 1 億円程度
になってもまだ資金調達は行なわないほうがいいです。
1 億円とは、社会的価値のある事業において、プロトタイプとクライアントがある状態で
す。銀行からの借り入れや市場調達を行なうのは、せめてバリュエーションが 10 億円程度
になってから。ここではじめて、成長資源として次のステップに行くための調達を行なう
のがいいでしょう。
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会社づくりのフェーズ バリュエーションに基づく資本政策
会社をつくる
プロトタイプの製品/サービス
をつくる
バリューマトリクス1.0
進化版の製品/サービスをつく
る
バリューマトリクス2.0
資本金
1億円程度の価値を創造するも、
調達は未実施
10億円程度の価値を創造し、調
達を実施
銀行より借り入れ(4%コスト)、
市場より調達(15~25%コスト:
IRR5年)
資産
BS
資本金
300~
1,000
資産
資本金
1,000
前受金
300
資産
資本金
10,000
借入
3,000
前受金
800
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資本政策のバランス
きちんとした資本政策をするまで
図 6
ビジネスプランは書いて書いて書きまくる
事業が続いていく限り、ビジネスプラン作りにも終わりがありません。私の日曜日は、
近所のデニーズでのビジネスプラン作りが中心です。こちらからメニューを頼まなくても、
いつも食べる「Chef’s Cobb サラダ」と「ドリンクバー」が出てくるぐらい、すっかり常
連化しています。それも寂しい話ですが、ビジネスプランは、とにかく事業の本質がわか
るまで書き直します。ただ頭で考えているだけでなく、書くことが大事です。
私のプランは相当古いものから残っています。たとえば、銘柄分析システムのようにプ
ラン通り実現しているものもありますが、プランの内容はどんどん変わっていっています。
繰り返しになりますが、シェアーズの本質は、「さまざまな視点や切り口をより多くの人
と分かち合う」ことだと考えています。そのなかで、金融事業の本質は、「投資に関する敷
居を下げ、社会的摩擦コストを低減する」ということです。私たちは、そうやって日本の
金融業界を根底から変えていこうとしています。
トレーディング(短期売買)中心の現在の市場で儲かるのは、手数料を取る証券会社だ
けです。このような収益モデルにおいて証券会社が儲かるのは社会的な摩擦コストに過ぎ
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ません。
そうではなく、ある会社を信じ、愛をもって投資をし、長期にわたってリターンを得る。
そうしたインベストメント(長期投資)の発想が広がれば、社会的摩擦コストが減ると思
います。そのための知識や情報を共有したいと考えているのです。
日本経済の発展の本質は、終身雇用にありました。終身雇用の本質は、社会関係摩擦コ
ストが極めて低いことです。つまり皆が、表面的によい会社へ次から次へと移っていって
いたら、技術の承継、企業文化の醸成はなかったと思います。UR(都市公団)の宣伝では
ありませんが、「人が触れあい、こすれ合いながら、深まっていったこと」こそが、日本の
発展の一番の原動力だったと思います。その意味で、人材派遣や転職市場の発展による人
材の過剰流動性には、私は同意できないし、生まれた子どもをすぐにベビーシッターに預
けるウォール街の風潮は異常だと思います。社会的一体性が大事だと思うのです。
証券・投資も同じです。企業と投資家(市民)が長くつきあう関係を構築してゆくこと
こそが、長期でみた社会生産性を高めるのだと、私は今、思っています。
しかし私たちもまだまだビジネスプランを書き直す必要があります。永遠に書き続ける
ことが仕事のような気がします。書いたものは、隠してはなりません。オープンにするこ
とが大事です。あらゆる人に話し、フィードバックをもらうべきです。そうすることが価
値向上につながります。
そう考えると、特許って何のためにあるのだろうとも考えます。少なくとも個人的報酬
ではありません。いつの世も報酬というのは内在的なものです。特許を取るぐらいの社会
的インパクトがあるようなアイデアは、外的欲求、たとえばカネをくれるから発明すると
いうロジックでは、なかなか生まれません。発明は内的に起こるもので、神様が授けてく
れるものだと思います。要するに金銭的なインセンティブの担保のために特許があるとい
うのはおかしいのです。
そうすると、成長のための資源として、競合の事業スピードを押さえ、アイデアを現実
化するための時間をケアしてあげますよ、というのが特許の本質なのだと思います。発明
に対し、個人的に何百億くれというのはすごくナンセンスです。第一、そんなに使い切れ
ないでしょう。
私は、ウォーレン=バフェットやビル=ゲイツの成果に関しても、ネガティブな部分が
あると思います。バフェットやビルは、稼ぐ力は桁違いにあったと思いますが、カネをう
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まく使う力があるかどうかはわからないからです。巨額の富を社会にうまく分配できるか
どうかは別だと思うのです。彼は、エイズの撲滅にものすごい寄付をするかもしれません。
しかし、世界的な医療問題の重要課題は、実はエイズではないかもしれません。環境問題
として現在焦点が当てられている二酸化炭素やオイルよりも、水の問題のほうが大きいか
もしれません。
色々な研究結果を見ると、世界の物質的な富の分配においては、慎重にやらなければな
らないと感じます。カネを持っている人がカネをうまく使えるかどうかは別であり、それ
は社会的に大きな問題だと思うのです。シェアーズは、そのような社会資本の循環になん
とか寄与できないものかと考えています。
あとは、事業が軌道に乗るまでに 3 年はかかることを覚悟するべきです。少なくとも、
私は 2 年たっても成功できていません(笑)。「石の上にも 3 年」を肝に銘じましょう。
書かない
紙へ
紙へ
考える
考える
考える 考える
紙へ
考える
堂々巡り
価
値
の
大
き
さ
(
=
思
考
の
深
さ
)
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コツは「何回も繰り返して創る/作ること
オープンであること
あらゆる人に話す&フィードバックをもらう
軌道に乗るまでには3年はかかることを覚悟する
事業の本質が分かるまで書き直す
社会価値を高める内容であるか?
ビジネスプランのコツは何度繰り返すか、にある
図 7
モグラ叩きはほどほどにする
本質を考え抜く。この作業はあらゆる場面で大事です。事業をやっていると、さまざま
な問題が噴出しますが、しかし表面的な事象に踊らされてはダメです。“モグラ叩き”はほ
どほどにするべきです。問題の核(コア)、メスを入れるべき根本原因を見すえ、目に見え
ないスイッチを切らない限り、モグラは永久に顔を出します。
目に見える現象(表出的問題)の方がよく見えるのでわかりやすいのですが、本来は、
問題解決のために“多くをする”必要はないのです。たったひとつの決定的に大事なこと、
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目に見えないホットボタン(本質)にメスを入れるという考え方が大切です。
一見目に見えないスイッチを切らない限り
モグラは、永久に顔を出す・・・
スイッチ
(ホットボタン)
“モグラ叩き”が失敗の原因・・・
普通の人にはモグラしか見えない
• メスを入れるべき根本原因
• ホットボタン
• 核(コア)
• 最もカユい場所
• キードライバー
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あせりはわかるが、もぐら叩きは、ほどほどにして・・・・
解決策の立案に当たって最も重要なことは、モグラたたきをしないこと。
目に見える現象に対処するのではなく、目には見えない問題の本質にメスを入れること。
図 8
成果
力
業
戦略的思考
本質
表出的問題(=モグラ)
(良く見える。わかりやすい)
(見えない。洞察が必要)
普遍
不変 単純
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本質論:力業で勝負するより、本質的問題に梃入れをする
戦略の本質は、レバレッジ(梃子の原理)を働かせることにある。
問題解決のために、“多くをする”必要はない。たった一つの決定的に大事なこと、
ものごとの本質を考え抜いてしっかりと捉え行動することにつきる。
図 9
ビジネスをブラッシュアップさせる 5 つの言葉
ここで、経営者として覚えておくと有効だと思われる言葉をいくつか紹介します。
まずは(1)「レバレッジ」。小さなインプットで、大きなアウトプットを出すことを意味
します。
次に(2)「スプレッド」、価値と価格に差があることです。優秀な企業家は、スプレッド
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を探すのが得意です。社会のニーズとすでに提供されているものにスプレッドがあるかど
うか、他社と自分の会社にスプレッドがあるかです。
たとえば、スプレッドをうまく見つけた企業の例に、リプラスという会社があります。
家賃保証ビジネスを最初に展開した会社ですが、目のつけどころが鋭いです。これまで、
不動産を借りる際の問題は、保証人を見つけることでした。とくに外国人などは非常に苦
労していたのではないでしょうか。
そこで家賃回収を同社が保証し、加入者は 2~3 万円を対価として支払います。オーナー
にとっては、家賃未回収のリスクヘッジができ、入居者は敷金や保証人といった、従来の
慣行にしばられる必要がなくなります。当時の社会のニーズと、提供されているもののス
プレッド(ニーズがあり、供給がなかった)にピタリはまったビジネスだと思います。
頭がいいなあと思いました。いわゆる民間の生命保険ビジネスに近い考え方です。生命
保険の本質は、社会全体でボラティリティ(リスクの変動)を下げるということ。私はこ
れまで生命保険を否定していたのですが、浅はかだったなと思います。確かに個人的視点
で見ると保険に加入するのはナンセンスなのです。自分が死ぬ確率(あるいは入院する確
率)と、保険にかかるコストを割り戻して考えると、もらえる保険金が割に合わない。な
ぜなら「胴元」である、保険会社が鞘を抜くからです。しかしこれは小さい話だなと思い
ます。社会全体でみると、国民全体のヘッジをみんなでしようという発想に基づいていま
す。社会全体のボラティリティを下げて、個別に徴収するというモデルは社会的で美しい
と思います。
また、スプレッドについて、先に触れた XBRL の登場について考えてみましょう。その登
場の意味は「財務情報に価値がなくなる」ということです。つまり市場経済における財務
情報のスプレッドがなくなるからです。そこにシェアーズのビジネスチャンスがあるわけ
です。
そして(3)「リアライズ」。事業のプランでも何でも、考えているだけで実現しなければ
意味がありません。realize には、収益源である価値を、価格として顧客に販売する、とい
う意味があります。
最近、重要視しているのは(4)「エフェメラライゼーション」。耳慣れない言葉かもしれ
ませんが、「一度きりの実行をより効率化する」ことを意味します。セミナーを何回も開催
することは物理的に難しいので、セミナーを収録した DVD を作成する。コンサルティング
プロジェクトもエフェメラライズする。1 回使ったものを、エンジニアリングを使ってウェ
ブで配信するなど、自動化する仕組みです。
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自動化するという意味では、(5)「マニュアライズ(=仕組み化)」も有効です。マニュ
アルというとネガティブなイメージを持つかもしれませんが、私自身も最近やっと、業務
をマニュアル化すれば創造的業務により時間をあてられることに、遅まきながら気づきま
した。シェアーズで評価される人材は、全体最適を考えられる職人と、しくみを設計し、
導入できる人です。
その点で、コンサルティングはテーラーメードなので、マニュアライズの意義は小さい
です。社会全体で見ると、価値基準が低いわけです。しかしそこをなんとか、コンサルテ
ィングのノウハウをマニュアライズして、資源を有効活用します。コンサルティングのバ
リューを、エンジニアリングで広く提供すれば、社会的価値をより上げることができます。
またコンサルティングというサービス自体も、「遠隔経営企画室」としてフレームワーク
をやり取りしながら、事業部を超えた情報交換・知識流通を実現していくことができるも
のです。
くり返しになりますが、知の流通こそが私のビジネスの根底にある考え方です。
システム
リアライズ
レバレッジ
(エフェメラライゼーション)
スプレッド
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経営者が使うと良い言葉
レバレッジ 小さなインプットで、大きなアウトプットを出すこと
スプレッド 価値と価格に差があること
リアライズ 実現化すること
エフェメラライゼーション たった一度きりの実行により、効率化をすること
マニュアライズ 仕組み化
図 10
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33
論点と選択肢を 4 つずつ出す
経営とは、意思決定の連続作業です。
キャッシュフローとヴィジョンのバランスをとりながら、意思決定し、一番やりたい方
向に向かいます。問題が起こったら、物事の本質を見極め、解決に向け意思決定をします。
意思決定で大事なことは、納得するまで考えることです。そして、比較検討を実施する
ことです。それには日ごろからの訓練が必要です。
例えば、最近、個人的に取り止めた意思決定がありました。引っ越しです。オフィスの
引っ越しは、固定費の構造を大きく変えるため、きわめて重要な意志決定です。いい物件
が見つかったのですが、土壇場で止めました。物件が悪かったわけではない。単に選択肢
を出し切っていないと感じたからです。不動産業者がたまたま紹介してくれた物件で即決
していいものか、と。
直感を信じて上手くいく場合もありますが、経営者のあり方としては良くないと思いま
す。「直感でいいと思った」では、カリスマ経営者ならまだしも、周りに説明がつきません。
私は、直感よりも事実を重視します。
日ごろから、論点を 4 つ、選択肢を 4 つ出し、○×をつける。小脳を使った経験的判断
をしないことです。いつも大脳を使ってゼロから考えます。意思決定を失敗しても、理論
化して説明できるようにすることが大事です。そもそも考えることを習慣づければ、意思
決定の失敗は減っていくと思います。
数ヶ月前に、事務職の募集をかけたのですが、採用は大成功でした。それは、30 人に会
い、解析して出した結論だからだったと思います。友達を採用してはいけない。つまり近
場にある資源を有機化して、事業に持ってこようとしてはダメです。
どんな場合でも、意思決定はとことん納得するまでやらなければなりません。ただし、
最後はハートで決めましょう。右脳左脳をフルに使って考え、キャッシュフローとのバラ
ンスを考えながらも、ハートで意思決定します。これが意思決定のあり方だと考えていま
す。
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論点
選択肢
必ずこの内部で
比較検討を実施する!
納得するまで考える
問題発生/
問題発見
問題発生/
問題発見
意思決定の流れ
問題 右脳/左脳 ハート
意思
決定
意思
決定
決定
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頭で考えて、整理し、ハートで判断する
BESTを目指す事から、BETTERを積み上げる方向へシフトする。
論点と選択肢をいつも持ち、意志決定に活かす。
図 11
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35
4 章 人、人、人――大事なのは愛。そして愛。
人こそが経営の要
いよいよ、 “人”の話に移りたいと思います。
現在、ブルー・マーリン・パートナーズに在籍しているのは、ルーマニアの国費留学生、
有能なインターンの大学 4 年生、完璧に事務をこなしてくれる女性、天才的システムエン
ジニアなど約 15 名です。多種多彩、ユニークな人材に恵まれています。ただ、何回も言っ
ているように、ここに至るまでは失敗続きでした。
私を助けてくれた人々のうち、何人かは去っていきました。
自分の夢ばかり追いかけ、人の気持ちに思いが至りませんでした。それでは上手くいく
わけがありません。さらに失敗続きで焦って余計に上手くいかない…。悪循環でした。
経営者のエゴやプライドは、事業の大きな妨げになります。そして、“人”の問題こそが、
経営の要であり、かつ経営者が一番悩むフィールドだと思います。
従業員
全人格 優秀な点
ここにフォーカスして雇用する
(誰にでも優れたポイントは存
在するため、そこが分かる/
見える人を雇用する)
優秀な人材の見つけ方
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人・人・人・・・
その人自身が自分よりも優れた能力を有する人と働く
その人の全部を受け入れようとしない
人として扱う
コミュニケーションをしっかりとる
失敗を多くおかす
図 12
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36
人と接する方法
私が経験から学んだポイントを 5 点挙げます。
まず、(1)「自分よりも優れた能力を有する人としか働かない」ということです。絶対、
ある部分では自分より優秀であると信じられる部分がなければなりません。
そして(2)「その人の人生すべてを受け入れない」ことです。経験から言って、人生、つ
まり全人格を受け入れようとすると、ビジネスが立ち行かなくなります。優秀なポイント、
つまり会社のヴィジョンに資する部分だけにフォーカスし、そのバリューに着目するべき
だと思います。自分を含め、完璧な人などいないのだと思います。
次に、(3)「人を人として扱うか、あるいはモノとして扱うか」。これは究極的命題です。
先ほども述べたように、個々人の全人格を受け入れようとすると経営が立ち行かなくな
ります。ある意味、自分も含め、「人を単なる経営資源として扱う」ような突き放した部分
が必要ではないかと考えています。
ただ、個人としては「人を人として」扱わなければならなりません。(4)「コミュニケー
ションをしっかりとる」ということが大切です。コミュニケーションの量は質に転嫁しま
す。
ひとつの取り組みとして、当社では、3 月からタイムシート制を導入しています。
タイムシート制には、目的が 3 つあります。1 つめは案件のコストと経費を把握する経営
資料とするためです。2 つめは、時給制の人に対しての報酬をフィックスするためです。そ
して 3 つめは、その人の生産性と業務内容をトレースする資料とするためです。つまりフ
ィードバックする材料として使うことです。
1 つめの経営資料としてだけ利用すると、タイムシート制導入は失敗します。末端の社員
が適当に記入するようになるからです。大事なのはフィードバックです。タイムシートを
出してもらったら、月に 15 分でも時間を取り、個人ベースでフィードバックをします。コ
ミュニケーションをしっかりとることが、内的モチベーションを上げていくための重要な
作業です。
そして最後、(5)「失敗を多く犯すこと」。失敗を早くして、倒れて、なぐさめてもらっ
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て、立ち直って、また戦うことです。要は早くたくさん失敗して学ぶということです。く
り返しが大事だと思います。そのためには、なぐさめてもらえるように、周りの人に日ご
ろから功徳を積んでおくことが大事なのかなと(笑)。プライベートでパートナーがいるの
に超したことはないですが、友人でも家族でも信頼できる人なら誰でもいいと思います。
とにかく事業で大事なのは、人に尽きるという話です。
最大のコストは経営者のハート
そろそろ、事業における最重要課題、経営者自身のマネジメントについて述べていきた
いと思います。2 年間やって、“人”の問題に並んでの失敗は、自分のメンタルマネジメン
トでした。
会社を辞めるとわかることですが、ものすごい空虚感に襲われるものです。むやみやた
らに寂しくなります。昔の同僚とランチしたくなり、お金を使いたくなります。ストレス
で不安がずっとつきまといます。視点が短期的になり、プランが思うように進まなくなり
ます。欲深くなって、プライドが出て…などなど。
事業における最大のコストは、経営者のハートです。
シェアーズのビジネスプランと実際のスケジュールは、オンタイムではなく半年ぐらい
遅れています。原因のひとつは、当初、私の体調が悪く、進行が遅れたことですが、焦り
や不安、ネガティブな感情が物事を遅らせたという点も大きいと思います。
2006 年、2007 年をピークに、自信がなく、人に会うのが怖いぐらいの時期が続きました。
もちろんこれは私だけに限った話ではありません。他の社長の話を聞いても、同じような
経験をされているようです。
感情のブレを徹底して排除するためには、「いかにリラックスするか」が非常に大切です。
リラックスするための出費は「経費」
起業当初、高級ホテルに泊まったりしていたことがあります。昼の 11 時にチェックイン
して、寝たり、お茶を飲んだり、公園を歩いたりしました。フィットネスをしてディナー
をとります。ただし、ムダづかいをする自分を責めたりする自分もいて、あまり効果的で
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はありませんでした。
今考えれば、これはむしろアリだと思います。日々、落ち着いて、しっかりとした判断
をしていかねばなりません。経営者のマインドが揺れていることこそが最大のコストです。
経営者にとって、リラックスのための出費は完全なる「経費」だと思います。税理士に、
経費としてきちんと認めさせるべきです。もちろん現実には無理なのですが・・・。
また当然ですが、「きちんと休む」ことが大切です。「かかりつけの医者やセラピストを
持つ」ようにしましょう。瞑想やアロマもいいし、運動も必要です。非科学的ながらも実
用的なことは多くあると思います。
科学は決して万能ではありません。科学はまだ真実を見つけていないと思います。
たとえば、意識を科学は解き明かしていないと思います。
皆さんは、意識がどこにあるかわかりますか?
「意識を意識する」という体験を是非して頂きたいと思います。私の場合、意識をハー
トの部分にもってきて、エネルギーが地球の底から、自分の中に流れ込んでくるようなイ
メージをわかせます。目をつぶって、ハートを意識します。そうすると平安な気持ちにな
れます。
常に、心の平安を自分で「選択」できるように訓練をしてみてください。自分の意識を
へその下に 3 分維持できるようにしてみてください。きっと実際的・物理的に大きな変化
が起こるでしょう。私の場合、このようなことが少しずつできるようになってきて、落ち
着きを取り戻すことができました。
お金がない時代があり、お金を求める時代があり、お金に翻弄される時代があり、心と
体が乖離する時代がありました。プライドを失った時代、愛を失った時代がありました。
嫉妬とか金とか、騙し合ったり脅されたり、いろいろしてきました。
しかし、ただ、目を閉じて、幸せだなと意識を変換するだけで、幸せを見つけることが
できると知りました。いつも答えは自分の内側にありました。それは古くからの真実です。
様々な外部刺激のなかで、最終的に自分の中から出てきた結論は、「幸福は、“選択”で
きる」という確信です。私を含め、多くの人は、お金があると安心だと思います。いろん
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なものを買う、食べる。それは幸せです。しかし自分はそのような物質的欲求を小さくで
きるといいなと考えています。
目を閉じて、幸福を選択すれば幸福になれる。モノはいらなくなります。少しずつ執着
がとれて、お金もいらなくなります。するとお金とはなんだろうと考え始めることになり
ます。社会におけるお金の位置づけと、人と人とのコミュニケーションにおけるお金以外
の代替手段の可能性について考え始めました。
コミュニケーションツールは、深さと広さという軸のなかで、お金以外にも言語やロジ
ック、数字、宗教やボディランゲージまで無数にあり、それらは代替可能だということが
わかってきました。あるものは狭いけど深い、あるものは汎用性があるけど浅いのです。
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さまざまなコミュニケーションツール
コミュニケーションツールは無数にあり、その深さと汎用性には幅がある。
図 13
たとえば、「ロジック」というツールは、非常に汎用性が高いけど、もう少しコミュニケ
ーションの深さを追求したいときには使えません。仕事の現場のなかで、より内的・意識
的なコミュニケーションツールを使って、ほかの同僚とコミュケーションしたほうが効率
的なケースは多くあり、そのような企業は長期にわたる実績を上げています。逆にロジッ
クでないと話が通じない組織はもろいのです。
私は、究極的なコミュニケーションツールは愛だと思います。
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  • 2. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 2 目次 はじめに 1章 起業前――落ちこぼれ社員から M&A 漬けの日々へ 2 章 違和感――会社は売り買いするものなのか? 3章 起業――3 つの大きな失敗 4 章 人、人、人――大事なのは愛。そして愛。
  • 3. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 3 ――はじめに この冊子を手にとってくださった方へ。 ありがとうございます。 この小冊子は、2008 年 3 月 1 日に行われた「世界を変える会社の作り方 ~起業 2 年の 走り方~」セミナーの内容を要約したものです。世界を変える会社、という大仰なタイト ルですが、この趣旨はあとでお伝えします。ここでは、会社とは何か、事業とは何か、お 金とは何かといったことをお話したいと思います。 皆さんの中には、起業されて成功されている方も、これから起業しようという方もいら っしゃるかもしれません。 私は起業を決意して、行動を起こし、何度も何度も失敗を繰り返して、ようやく 2 年間 を乗り切った新米の経営者です。まだ成功しているわけではありません。ただ私がなぜ起 業をし、何に失敗し、何を学んだのかについて率直にお話することで、皆さんの将来の糧 にしていただければという趣旨でこの小冊子を作りました。 どうぞじっくりとご覧くださいませ。 もしよろしければ、お近くの方に配っていただければ幸いです。 コメントもお待ちしております。 ブルー・マーリン・パートナーズ代表 シェアーズ代表 山口揚平 yy@bluemarl.in
  • 4. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 4 1 章 起業前――落ちこぼれ社員から M&A 漬けの日々へ 成績は 20 人中 19 番。仕事さえなくて… まず、起業前の社会人デビュー時期に遡りたいと思います。 社会人になったのは、ちょうど 10 年前。1998 年、大学卒業後、コンサルティング会社に 入りました。コンサルティング会社に入った理由は“就職”したくなかったから。いろん なことを知りたかったし、自分の人生の選択肢を狭めたくないと思っていました。だから どうしても“トヨタ”や“ソニー”には行けなかった。一番オルタナティブ(選択肢)が 多いものはなんだろうと考え、コンサルティング会社を選んだのでした。 なんとか入社したまではよかったのですが、最初、全然ついていけませんでした。採用 倍率が 200 倍と高かったこともあり、私からみると同期はあまりにも優秀でした。自分は 経営学のケの字もわからないし、バランスシート(貸借対照表)も読めない。パワーポイ ント、エクセルも使えませんでした。要するに落ちこぼれでした。 大学時代に奨学金を利用していたこともあり、社会人になったばかりの頃はお金もあり ませんでした。3 人兄弟なので、みんな勝手に大学に行けという教育方針でした。会社は実 家から遠く、とても通えませんでした。しょうがないので、四畳半の月 3 万円の品川の部 屋に住んでいましたが、風呂は無くトイレは共同でした。にもかかわらず、となりの駐車 場は月 4 万 5000 円でした。停まっているカローラを見て、あの車よりも安いところに自分 は住んでいるんだなぁ、とぼんやり思ったりしました。会社ではついていけないし、お金 もないし、大変な時期でした。 新入社員として 3 か月ぐらい経ったころ、ショッキングな事実を発見しました。何気な く会社の共有サーバを覗いてみたら、人事のフォルダが出てきました。そこに、新人研修 の評価が出ていたのですが、なんと自分の評価が同期 20 人中の 19 番。これはショックで した。 たしかに周りはドクター、マスター勢も多かったのですが、でも 20 人中 19 番はないだ ろうと。20 人の中で 19 位だと、仕事はないわけです。仕事がないのを、この業界では、「ビ ーチ」といいます。ビーチというのは、暇そうに横になっている、みたいな意味からそう いうのです。そんなビーチな日々を過ごしているわけだから会社に行ってもやることがな い。新入社員だから、妙に高いモチベーションで出勤する。でも、会社にいても、ただネ
  • 5. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 5 ットを見ているような日々。 あるとき、パートナーと呼ばれる会社で一番偉い人が来て、「キミ、ヒマそうだね」と声 を掛けられました。同期は皆、プロジェクトに出ていたので、確かに私だけヒマそうでし た。その私に向かって「ケーブルテレビ業界について調べてくれ」というのです。私は「わ かりました!」と即答しました。 “渡りに船”とはこのこと。ホントに必死に調べました。だって、2 か月ぐらいまったく 仕事がなかったのですから。 当時は、自由になるお金はありませんでした。ですが自腹でリサーチセンターに行き、 コピーをとったり、調査をしたり。分析能力なんてないから、ただ調べることくらいしか できませんでした。3 日間、ほぼ徹夜で調べ上げてファイル 10 冊。400 個ぐらいラベルを 貼り、要約したペーパーをパートナーの机に置いておきました。 パートナーはファイルの存在に気付いて、「あ~、ありがとう」と声を掛けてくださいま した。でも、後でわかったことなのですが、パートナーにとって「調べてほしい」なんて 話はものすごく小さなこと。トップのパートナーだったら、1 日に 10 回ぐらいスタッフに 言うようなセリフだったのです。たぶん、彼は私が調べた 10 冊のファイルに目を通してな いんじゃないかな。まだ、あの事務所の倉庫にしまわれていると思います(笑)。 「知りたいのは情報じゃない! 考えろ!」 そんなこんなの日々を送っていたところで、ようやくチャンスが巡ってきます。全国の 自治体の制度に関するリサーチでした。私は、同期のひとりとチームを組んで、北海道の 小樽市から、同期は沖縄の宜野湾市から、かたっぱしから電話して調べ上げました。そこ でのリサーチ結果が認められ、初めて大きな仕事を任されることになります。それが今後 のキャリアを決定付ける M&A 案件の入り口でした。 ある米国の自動車会社の金融子会社が、日本企業を買収するという案件です。いよいよ M&A どっぷりの人生がスタートします。 その企業に関する情報をあらゆる部署を回って調べ上げ、作成したファイルは 20 冊ぐら いにもなりました。積み上げると自分の背丈ほどありました。自分ではよくできたほうだ と思っていましたが、クライアントの外国人もパートナーも口をそろえてこう言うのです。
  • 6. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 6 「これは使えない。こんなものを読むわけがないだろう!」と。 とてもショックでした。外国人の方は、典型的なアメリカ人で、ものすごく太っている くせに、いつもピザを食べながらダイエットコークをガブ飲みしていました。毎日 11 時ぐ らいに「どうだ?」なんて重役出勤してくるだけでなく、電源コードをひっかけて私のパ ソコンをひっくり返したり。ものすごく腹立たしいことが山ほどあったんです。でもクラ イアントだし、自分は英語もしゃべれないし、文句を言いたくても言えなかった。 いろいろガマンしてやってきたことがここで爆発しそうになりました。 「なんだよ、やってられっかよ!」って。 そのとき、クライアントの年配の方が来て言うのです。「違うんだ」と。 「我々が知りたいのは、情報じゃない。情報じゃなくて、この会社を動かしている根本 的なメカニズム、価値の源泉を知りたいんだ」と。そして「この会社の価値はいくらなの か」。知りたいのはその 2 つだけだと。 “まさに目から鱗。” 考えてみれば、私の大学の卒論なんてネットが普及し始めたばかりのころで、全部コピ ペの切り貼りのようなものでした。初めて教わったわけです。この仕事で大事なのは「考 える」ということだと。 今でこそ、思考論とか構造化論とか貨幣論についていろんなメディアで執筆させて頂い ていますが、「考える」ということを知ったのは、このときが初めてでした。 物事を「考える」ということ。考えて「ものの本質」を見抜くということ。 その大切さに気づいてからようやく人並みに仕事が出来るようになったと思います。ど んなに徹夜して調べてもダメです。因果関係を見抜けなければ価値はありません。たとえ ば、人事制度と売掛金管理はどう関係しているのか。売掛金管理システムは、どういう思 想で作られているのか。その思想は、会社の文化にどう根ざしているのか。その文化は、 われわれの会社とどう関係があって、どうシナジー(相乗効果)してくるものなのか。それ らがクライアントの知りたいことでした。 システムの背景にある思想、思想の背景にある根本的な信念や哲学まで掘り下げた上で、
  • 7. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 7 表出している現象を見なければなりません。そういう本質的なことから考えるという作業 を丁寧に始めるようになって、ようやく仕事らしい仕事ができるようになりました。見え ないものを見る力、それこそが考える力というものだと認識することができました。 トントン拍子で M&A 時代を謳歌 考える大切さを学んでからは、順調そのものでした。上司の転職を機に、アーサー・ア ンダーセンに入社。そこで某巨大複合施設の再生プロジェクトに携わります。その後、デ ロイト・トーマツに戻り、M&A ファームの設立に参画。某巨大複合企業や巨大小売業の再建 に、チームとして携わります。 複合施設の案件ではいろんなことを学びました。関わったのは、ハゲタカ(破綻証券投資 戦略)ファンド論議を巻き起こした、とある有名なファンド会社の人たち。いわゆる超エリ ートの方々で、下っ端連中とは普段は目も合わせません。でも、ワーキング・キャピタル (運転資金)とは何なのか、財務の知識などなど、たくさんのことを教えてもらいました。 今から考えると本当に何も知らなかったのだと思います。 某巨大複合企業の案件では、初めて分析のチームリーダーを務めました。とてつもなく 大きく、タフな再生プロジェクトでした。 M&A の分析には、ものすごいスピードが要求されます。話が立ち上がったら、各チームの トップがすぐに集まり、みんなで、何を考えるかについてディスカッションします。その 後、「チームアップ」といって、会計士、弁護士、保険数理士、業界のスペシャリストたち が結集。まるでウィルスに感染するようなスピードで、クライアントとのアポイントメン トが入ってきます。すごい速さでエクセルの表が細かく、小さくなっていきます。「関数が 崩れるからエクセルを触るな!」と号令が飛ぶ。朝 5 時まで分析して、取っ組み合いのケ ンカをするぐらいの勢いで議論をしていました・・・。 コンサルティング会社は、完全にフェア。何を言うかが大事で、誰が言うかは問われま せん。必死でした。でも、とても楽しかった。オーケストラのように、チーム一人ひとり が自らの役割に従事し、全体に折り重なって形となっていく。みんなで一体となって価値 を創造していく醍醐味を味わいました。
  • 8. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 8 2 章 違和感から起業へ――会社は売り買いするものなのか? 違和感からウツ病を患い… しかし、少しずつ違和感を覚え始めていたのも事実でした。自分がやってきたこと、本 当にやりたかったことは何か? 日本政府や日本企業を相手に、いわゆる“ガイシ”の手 先として株主資本主義を推進することなのか? 子どものころ、純粋に会社は社長のものだと思っていました。でも、M&A の世界では別の 答えを教えられました。「会社はキャッシュマシーンに過ぎない」と。 「キャッシュを生まないこのドームをどうして閉じないのか?」 再生企業の取締役がずらーっと並んでいる前にファンドの人が 3~4 人いて、こう問いか ける。私たちはファンドの後ろでそのセリフを聞いていたわけですが、そもそも「会社っ て売買していいものなのか?」と不思議でなりませんでした。 この企業はもともと三セク(第三セクター)で、その地域出身の人が地元を活性化した いという思いで作ったものでした。子どもたちに楽しく遊んでほしいというのが本質。そ こにおけるキャッシュは血液。そこには意識、信念が通っているはずです。でも、本質的 なものは何も議論されませんでした。非常に違和感を覚えました。 当時はまだ若く、上司からほめられることが何よりうれしい年齢でした。上司がほめて くれる。皆で美味しいものを食べにいく。それはそれでうれしい。だから一生懸命働きま した。しかし、そんな環境も次第にカラダに合わなくなってくるわけです。グチが口をつ いて出るようになってきて、毎日毎日、本当に疲れていました。人の物質的欲求なんてた いしたことないのに、お金を持ってハッピーリタイヤしたほうがいいなんて考えたりもし ました。 そんなことをせこく考えるようになったからなのか、その頃から体調も崩れてきて、い わゆる、今言うところのウツ病になってしまいました。毎日 3 時間ぐらいしか寝ることが できないし、血尿もでるし、薬が手放せない状態でした。ヘタなエリート意識を持ってい たのも厄介でした。「こんな屈辱はない」などといつも考えていました。 週末になると、自転車で新宿御苑に行って、「自分は何を使命に生きているのか」などと
  • 9. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 9 哲学的なことをぼんやり考える日々が続きました。 ATM で 30 万円ぐらい引き出して旅行代理店に直行し、明日からどこかに行きたいと言っ たこともありました。でも明日からなんて行けるところはないし、パスポートも切れてい ることがわかって、そのときは行けませんでした。 でも、会社員を辞める直前の 2005 年、タイのピピ島に逃亡しました。数日泊まって、成 田に着いた次の日、タイで大規模な洪水があって泊まっていたホテルが流されたんです。 「これは何かある」と、何かちょっと運命的なものを感じました。そのころ、とりあえず 会社を辞めたくて仕方がなかったわけですが、背中を押してくれるメッセージにも思えま した。 お金以外のコミュニケーションツールがあるはず 金融会社が言うところの会社は確かに「キャッシュマシーン」であり、魂を持たない自 動販売機です。 しかし、会社という法人は、ロジック(論理)だけで割り切れるものではなく、それぞれ臭 いがあり、カネで計れる以外の価値があります。会社は経済体であると同時に、小さなコ ミュニティ(共同体)です。そして共同体は、違うルールやプロトコル(通信規約)でコミュ ニケーションしています。それをキャッシュで売ったり買ったりするのが、私の違和感の 本質でした。 そうこうしているうちに、社会におけるコミュニケーションの方法を、もう少し深遠で 価値があり、有効なものに変えていきたいという思いが出てきました。 貨幣はもともと人と人とのコミュニケーションツールにすぎません。それが価値保存機 能とか、いくつかの信用創造機能をもつことで、現実から乖離してきたというのが、金融 資本主義の帰結。みんなお金が欲しいが、お金は物質の象徴でしかない・・・。 M&A のキャリアを通して、自分は思考論、つまり、考えるということを教えてもらった と同時に、徹底的な金融資本主義というものを見せつけられもしました。 この 2 つがトリガーとなって、貨幣とは何か、M&A とは何か、会社とは何かについて考 えるようになり、違和感のなかで病気にもなり、そんな状況で今の会社を立ち上げたとい うのが、起業にいたる経緯です。
  • 10. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 10 ブルー・マーリン・パートナーズを企画会社として設立し、金融情報事業としてシェア ーズを立ち上げましたが、私たちは、投資家を儲けさせることを第一の目的とする投資顧 問ではありません。正確で的確な知識と情報を広く流通させることを重視しています。 投資家が儲かればいいとは思います。しかし、会社というのは、本質的に社会に価値を 生み出す創造体です。自分が投資をする会社があって、その会社が上場して価値を生み出 して、その価値がバックされて自分に返ってくる。そういうフローに参画する形での投資 は、ただ儲かるだけの投資より、ずっと価値があると思うのです。 現在行われている投資の多くは、株価の上下を予測しその売買を通して利ざやを得るこ とを目的としています。それは誰かが得をすれば、誰かが損をするというゼロサムゲーム にすぎません。そんなゲームをやっているヒマは人生にはないはずです。 株価が上がろうか、サブプライムローン問題が起ころうがそんなことは関係無いわけで す。「私はこの会社が好きだ」という思いが投資家の根底にあるとき、資本主義は温かみを もって機能しはじめるのです。 では、好きになるということはどういうことかというと、その答えにはまず「理解」が あると思います。何を理解するのかというと、株価ではなく、企業そのものでしょう。だ から私たちシェアーズは企業情報の流通を行うのです。 「意味の時代」に目指すべきもの シェアーズは、現在、バリュエーションマトリクスという銘柄分析システムを開発・提 供していますが、私たちの当面の目標の 1 つは、有価証券報告書を完全にビジュアライズ (可視化)することです。 私たちはすべての会社の過去数十年にわたる詳細な財務データをもっています。それを 持っている独立系の金融サービス企業は日本では私たちの会社だけです。 確かに今後、XBRL(財務諸表記述言語)などの利用によりデータの入手は容易になるでし ょうが、入手できる財務データは限られています。それに残念なことに、世界の富は、情 報格差が生み出すものだから、みんなが XBRL を取れるようになるということは、財務情 報の価値がなくなるということです。これが完全市場経済の原則です。 そうなるともっと深遠な企業を理解する情報が必要になってきます。そこに私たちの出
  • 11. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 11 番があるのではないかと思って、さらに深い企業分析データベースを構築中です。 儲けるとか儲けないとかいうよりは、企業カタログ、銘柄カルテを生成しています。忙 しいサラリーマンでも片手間のなかで企業の何かを理解し、投資するためのツールを、多 くの人に提供したいという思いがあります。 そもそも、シェアーズで目指そうと思うのは、知識と情報を世界の多くの人たちと分か ち合うことです。 私は大学時代の論文の一行に、「情報化社会の本質は、情報が価値を持たないということ」 と書きました。私たちは情報ではなく、人々に具体的な意味を提供しなければなりません。 情報ではなくて意味です。意味というのは、個性的で個別的なもの。人によって異なる もの。だからこそ面白いのです。 情報化社会の 1980 年代までは、インフラの時代でした。NTT や AT&T が活躍し、その 成功のカギは巨額の資本投下やネットワーク構築力だったりしました。 1990 年代になると、彼らはほとんど役割を終えてきて、情報の時代に入りました。そこ で活躍したのがグーグル、ヤフー、アマゾン。グーグルは、もちろんページランクのしく みも優れていますが、本質は情報を集めることだったと思います。そしてこれらの会社も、 いずれ役割を終えると思います。 今、グーグルからスピンオフして立ち上げている会社がたくさんあります。彼らは最初 から大金持ちですが、これまでとは違う世界、つまり「意味の世界」を作ろうとしています。 私たちは、その「意味の時代」の黎明期を迎える世代になると思います。意味の時代にお いては、それぞれの目的に対して適切なフレームワーク(切り口)を与える力が必要とな るだろうと思います。 「意味の時代」のプロジェクトとして、私たちシェアーズは「バリュエーションマトリ クス」を提案しています。 バリュエーションマトリクスは、企業価値をワンクリックで算出するツールです。企業 価値評価におけるディスカウントキャッシュフローの仕組みを知っていても、それに必要 な財務やベータ値の情報がなければ、答え(バリュー)がわからない。そこで、「仕組み」 と「情報」をセットで提供しよう、というわけです。忙しいサラリーマンでも、仕事の合
  • 12. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 12 間に気になる会社を理解し、投資ができるようなツールを提供したいと考えたのです。 グーグルのページランクには、汎用性はありますが専門性はありません。投資や金融業 界では、フィナンシャルならではの専門性(切り口)が求められます。それに応えるのが バリュエーションマトリクスであり、我々が提供していこうと考えているものです。 インフラの時代 “情報”の時代 プレーヤー NTT AT&T Google Yahoo! Aamazon • 巨額の資本 投下 • ネットワーク 構築力 成功の 鍵 • 情報収集力とイ ンデックス化 • スピード • 目的に対して適切な 切り口(フレームワー ク)を与える力 • 普遍性/応用可能性 • 信用力 • 伝え方の軽妙さ ~1980 ~2000 “意味”の時代 © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 基本的なコンセプト 情報化社会の本質は、情報が価値を持たないということです。 私たちは、情報ではなく、人々に具体的な意味を提供します。 図 1 社会全体で「切り口」を分かち合う 実は、私たちが日々行なっているコンサルティング業務も、「切り口」を提供するビジネ スです。 たとえば、現在、あるクライアントの元に週 1 回通っています。そこでは朝 9 時から 5 時まで、1 時間ずつ、さまざまな部署の人たちとのミーティングを実施します。毎回、製造 部門、販売部門などの担当者が代わる代わるやってきて、抱えている問題を提起します。 我々は、それらの問題を「なるほど」と聞きます。しかし、答えは提供しません。むし ろそれはできません。提供できるのは、問題について何をどう考えるべきかの切り口、す
  • 13. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 13 なわち論点です。たとえば、工場の再編の話が出たとします。すると私たちは、「では、イ ニシャルコスト、ランニングコスト、工数、外部および内部的なリスク、一時的なしのぎ をするためのフォローオペレーションを考えなければなりませんね。」といった話をします。 考えるべき論点を挙げるのです。 具体的にはどうするか。複数のプランを提供します。そのなかでどのプランが良いか。 仮説を提示し、次の週までに検証をします。次のミーティングで、「このプランで再編しま しょう。」と決まります。しかし、部長が首をタテにふらない。新しい問題が生まれます。 では、部長のアジェンダ(検討課題)は何なのか。個人的なアジェンダ、あるいは組織 内の利害関係はどうなのか。論点と選択肢を煮詰めていきます。プランを実施するのに、 障壁となる新たな問題点をさらに検証します。検証作業のくり返しによって、クライアン トが抱える問題を小さくしていくわけです。 問題解決とは、問題を“消滅”させることではなく、“小さくして咀嚼しやすくすること” です。 こうしたサービス、ビジネスを、エンジニアリングの力を借り、多くの人とシェアした いと私たちは思っています。コンサルティング業務で 1 つの会社の価値を追及するのもい いと思います。けれど、より広い社会全体で「切り口」を分かち合うほうが、よりハッピ ーだと思うのです。 「切り口を分かち合う」ことについては、ぜひみなさんにも考えてほしいです。 どんなアイデアが考えられるでしょうか? たとえば、アマゾンにおける「知の相関図」というのはどうでしょう。 私の本の読み方はちょっと変わっています。ベッドの横に、いろいろなジャンルの本が いっぱい伏せてあって、1 章ごとに読んでいくんです。分野も経済学や金融、社会心理学、 哲学などバラバラ。それらを並行して読み、学際的に考えるようにしています。なぜなら、 問題は横断的に起こるからです。たとえば、M&A は、システムやコンプライアンス(法令遵 守)、IR などあらゆる要素を含んでいます。全体を包括的に見なければなりません。よって、 分野が偏らないよう、横断的な読書を心がけているわけです。 読んでいる本に紹介されている本を読む、ということもよくあります。いわば“芋づる 式読書”ですが、これをアマゾンで体系化できないものか、と。
  • 14. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 14 複数の本の「関係性と重要性を変数で表すマップ」があるといいなと、考えるわけです。 関係性は、どのレビュアーが同じ本をレビューしているかなどの情報からはかることがで きるだろうし、重要性はランキングから計測できます。情報を構造化し、意味に変換する 一例ですね。 あるいは、今やっているのは先ほども述べた有価証券報告書の完全ビジュアライゼーシ ョン(可視化)。有価証券報告書なんて、正直読む気がしません。でも、それが本や DVD を “ジャケ買い”するように、パッと見た目で判断できればいいな、と。たとえば、監査法 人の判子の押し方で、悪い会社かどうかがわかるとか(笑)。情報を意味あるものに可視化 するビジネスです。 ほかにもあります。 たとえば「歴史マップ」。世界地図があり、その上にバーがあって、紀元前 500 万年前の バーを動かすと、世界の様相が変わって見えるというしくみはどうでしょう。クリミア戦 争とマリーアントワネットの処刑とアメリカ独立戦争がどのように有機的につながってい るのかが一目でわかるというしくみです。 六法全書だって、スキャンニングして可視化できれば、もっと法律が身近なものになる のではないでしょうか。 考えるだけでも楽しいし、実現すればもっと楽しい。こういう「知の流通ファーム」こ そ、シェアーズが目指している方向です。
  • 15. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 15 3 章 起業――3 つの大きな失敗 会社を設立したものの… 話を私の起業ヒストリーに戻します。 2002 年ぐらいから少しずつ違和感を覚え始めていた話はすでにしました。そのころから 何か自分でできないかと模索し始めました。ブログを書き始め、2005 年 4 月には本を出版 しました。「なぜか日本人が知らなかった新しい株の本」(ランダムハウス講談社)という 書名で、2005 年のベストセラーにもなりました。 そして、「知の流通ファーム」という構想を元に、2006 年 1 月、ブルー・マーリン・パー トナーズを設立します。 設立したといっても、体調は芳しくなく、当初は週 3~4 日働けばいいほうでした。それ でも、セミナーを実施し、DVD を販売し、バリュエーションマトリクス(企業価値評価ツー ル)をリリースすることができました。しかしそれほど成功していたわけではありません。 生活はなんとかなっても、会社のお金はどんどん減ってゆく。2 年間は何も上手くいかなか ったな、というのが正直な感想です。 では、何をどう失敗してきたのか。例を挙げれば数知れないのですが、大きくわけると 3 つあります。 1 つめの失敗は、なんでもかんでも自分でやろうとしたことです。経理も総務も営業もな んでも。よく考えると、どれも私の得意分野ではありませんでした。その事実を素直に認 め、手放すことができなかったので、いつもバタバタしていました。 ビジネスで肝要なのは“外部化”がいかにできるかだと思います。しかし「手放す」こ とはとても勇気のいる心的作業であり、経験と失敗に基づく気づきの連続による、人間的 な成熟が必要です。 2 つめの失敗は“人”でした。前の会社時代の同期や大学時代の後輩がいろいろと助けて くれたものの、何人かは去っていきました。余裕のない中、ストレスを抱えながら仲間と ビジネスをやってもうまくいきません。自分の夢ばかり追いかけて、人の気持ちを考えて いなかったのが敗因です。また、哲学・真理の追求ではなく、他者・人間・現実に焦点を
  • 16. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 16 当てて日々を送るようにしたほうが結果的にうまくいく気がします。 3 つめの失敗は、商品(バリュエーションマトリクス)を証券会社に提供するまでに時間 がかかったことです。これは致命的でした。商品力ではなく、“動機”が招いた販売力の失 敗です。 最大の敗因はプライドとエゴ 失敗から学んだ“外部化”、“人”、“動機”の大切さについては後述するとして、そもそ も幾多の失敗の根源は何だったのかについてお話します。 それは自分自身のプライドとエゴに尽きます。M&A の仕事をやっていたときのヘタなエリ ート意識こそが最大の障壁でした。 例えば、今私たちがオフィスを構えている「ちよだプラットフォームスクウェア」。SOHO (Small office home office:小規模事業所)をやっている人たちがいっぱい入っていま すが、オフィスは広くはありません。千代田区から払い下げたパイプイスが並べられ、机 もどこかの課長の机で、引き出しに昔の人事名簿がまだ入ったままの状態だったり…。 コンサル時代の同期で、ずっと私の事業やプロジェクトを支えてきてくれたパートナー と、オフィスを構えたときに撮った写真があります。その写真の私の表情は苦笑いです。 写真からは「ぶっちゃけ、こんな所、居られないよ!」という気持ちがにじみ出ています。 苦笑いの表情通り、「ここから一刻も早く出たい!」と思っていました。周りの SOHO の人 たちを見下していたというか、「自分は違うんだ」と考えていたふしがありました。 コンサル業界にどっぷり浸かって、ハイレベルな経営課題を扱い、トップマネジメント との接点を持ち、一般より高めのサラリーを 8 年間ももらっていたら、エリート意識が染 みついてしまいます。そしてそれが創り出すのは本当に小さな世界観。ここから早く脱却 しなければなりません。エゴという名の小さな自己は、物事をストップさせる最大の壁に なります。 モノを売る“動機”の話につながりますが、知識やスキルがあっても、それだけでは上 手くいきません。それは、ハートを含めた本当の「賢さ」にはかなわないのです。 私が以前在籍していたアーサー・アンダーセンの事件を例に挙げます。この 100 年の伝
  • 17. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 17 統を持つ会計事務所は、2002 年のかの有名なエンロン事件で淘汰された会社ですが、その エンロンの CEO(最高経営責任者)でジェフリー・スキリングという人物がいます。 彼は、マッキンゼーからハーバードの MBA に入学する面接でこう聞かれました。 「ところで、君は頭がいいのか?」と。 彼の答えはこうでした。 「I’m fucking smart!(とびっきり!)」。 しかし、その後の顛末はみなさんがご存知の通り。巨額の企業詐欺に手を染め、逮捕さ れます。“動機”が不純だと長期では決してワークしません。バリュエーションマトリクス を販売してきた自分の経験からも言えることです。 売るものは「社会的価値」 では“動機”とはどうあるべきものなのか。ここからは、起業・事業のあるべき姿、噴 出する諸問題に対する、実際の対策もあわせて紹介していきます。 Value( 社 会 価 値 )** 大 小 小 大Mission(使命、授かる物)* *Mission Oriendedであるということは、 Efficientであり、Effectiveであるということ **ValueはPriceでもある Vision 個人 独 立 事 業 企業(法人) © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 会社とは?事業とは? 会社はヴィジョンを目指し、かつ社会価値の創造と個人個人のミッションを満たすためにある。 事業とはヴィジョンを目指すための手段である。 図 2
  • 18. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 18 図 2 をご覧ください。縦軸の「Value(社会価値)」。まさにこれが“動機”とするべきも の。社会的価値をどう売るのかを、いついかなるときも徹底的に追求しなければなりませ ん。 シェアーズと社会的価値との関係はどうあるべきか。シェアーズが持っているバリュー は何なのかを考え、行動しなければならないわけです。エゴで立ち回ると上手くいきませ ん。 エゴとは小さな自己の動機です。ここから抜け出したい。人から尊敬されたい。お金が 欲しい。まさに創業当初、呪縛されていた負の感情です。商品が売れなかった、というよ り営業の機会さえ与えてもらえなかった(話を聞いてもらえなかった)、最大の原因でした。 どうしたら自分の「分け前」が増えるか。どう高く売るか。そのことばかり考えていまし た。 ものすごく欠乏欲求がありました。やましい動機や感情は相手に伝わるもののようで、 まったく上手くいきませんでした。 社会的価値から割り戻して価格(プライシング)を考える。純粋に相手にとってどうい う価値があるのかを考え、提案するようになってから、反応が変わってきました。話を聞 いてもらえるようになったのです。 相手目線という言葉は単純だけれど、その視点を持ってからの交渉は順調。商品の中身 はまったく変わっていないのに…。 人間はエゴ(小さな自己)とエヴァ(大いなる自己)を持っていて、その葛藤の中で生 きているものです。エゴをどう「デトックス」するか。経営者は徹底してエゴデトックス をしなければなりません。 経営者の頭の中が一番のコストだと誰かが言っていましたが、私は「経営者のハート」 が一番のコストだと思います。経営者のハートは、前提として、「世界中のすべての人々に とって価値のあるもの」でないといけない。説教的ですが、経験則に基づく私の理解です。 バリューとミッションとヴィジョン 会社は、本質的に社会価値を創造する組織体です。そこに加わる要素が個人個人のミッ ションです。図 2 の横軸にあたるものです。ミッションは、自己の内面を見つめると降っ
  • 19. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 19 てくる。「あなたはこれ、あなたはこれ」というふうに。 ミッションは、誰もが授かるものです。そして、それは自分の内面に見つけるものです。 この世界では、誰もが世界で唯一の「ピース」を担っていて、ほかの人の「ピース」とは 重ならないのです。そうやってこの世界という「ジグソーパズル」はできています。名目 上は税理士だったり、弁護士だったりと重なりますが、究極的には重なりません。 世界における一番重要な認識は、「幸福の無限性」だと思います。富や幸福に、奪い合う ものはないということです。それは自ら創り出すものです。金も奪い合うものではない。 足りないという視点に立ったとき、幸福はおのずと遠ざかります。自分には自分のミッシ ョンとバリューがあります。この認識こそが本当の自己の確立なのだと思います。 経営者としての仕事の本質は、自己を含め組織に関わる人々の個別のミッションを把握 することだと思います。それを組織の経営資源として「有機化する」ことこそ、マネジメ ントの定義ではないでしょうか。 では、私自身のミッション、つまり使命は何だったのか。 それは、「知の構造化・有機化によって、世界がすべてつながっている 1 つの存在である ことを証明すること」だと自覚しています。 その基本となっている考え方が、「メタ思考」だと思っています。メタ思考とは、一見、 無関係の複数の現象に対し、その深いレベルで、共通性、有用性を見出す思考力のことで す。たとえば、倫理と経済にはどういう因果関係があるのか、そこに共通性を見出す力の ことです。これは曖昧かもしれませんが、自分の中では明確になっている概念です。 このような私のミッションから、「切り口」を分かち合うことをミッションとする、「知 の流通ファーム」としてのシェアーズが誕生したのです。 動機としての社会的価値の追求と、強みとしてのミッションの交点に「ヴィジョン」が あります。 シェアーズは今、金融事業として「100 万人に正しい知識と情報を正確に伝える」という ミッションを持っています。さらにもう少し大きなヴィジョンが、末端価格 2 兆円の知の 流通ファームの創造です。それが、シェアーズが目指す具体的・最終的な姿です。
  • 20. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 20 ヴィジョンには個人ベースのものもあるし、法人ベースのものもあります。個人として それを目指すことが「独立」。法人化してそれを目指すことを「事業」といいます。 このフレームワークにおいては、すべての経験、知識、人、モノ、カネという経営資源 は手段にすぎません。事業というのは、ヴィジョンへの道のりを歩む「過程」と定義され ます。その意味では、事業は決してエコノミックなもの(経済的行為)でなくてもいいわ けです。ビジネスを常に経済的行為と考えるのはナンセンスだと思うのです。 実は、世界の共通理解とオペレーションは、経済から離脱しつつあると考えています。 経済とは何かと定義すると、それは貨幣を中心とするコミュニケーションネットワークと なります。けれど経済的な欲求というのは、究極的に追求すべきハピネス(幸福)の、1 つ の従属変数に過ぎません。つまり、ほかにもハピネスの変数はあるということです。 たとえば、ブータンでは、GNP(国民総生産)の代わりに GNH(国民総幸福指数)を国家 運営の指標にしています。わが国もかつてはそうでした。日本は社会主義と資本主義の「合 いの子」のようなバランスの上でうまく機能していました。 そもそも島国共同体の日本がエコノミックな世界に引きずられたのも、アングロサクソ ン的な多様民族国家におけるコミュニケーションの必然性から来ています。元々、日本で 求められていたハピネス(幸福)のあり方は、経済的価値一辺倒ではなかったはずです。 最近、社会的企業家(社会にどれだけの強い効果を与えられたかを成功の尺度にしている 企業家)がブームのように言われていますが、新しいものでも特別なものでもないと私は 思います。 売上も大事な指標であるけれど、果たして売上が大きい会社が社会的価値を創造してい るかどうか。常に問う必要があるのではないでしょうか。 ポスト XBRL、ポストグーグルを目指す では、価値とはどうあるべきか。表題の「世界を変える会社」につながる部分です。 Web、IT 関連で独立する時に究極的に考えなければならないのは、「なぜグーグルじゃい けないのか。なぜ自分はグーグルに入社しないのか」ということです。それに答えられな いのであれば、その動機はエゴだと思います。独立心のほとんどはエゴですが、その動機 ではうまくいきません。
  • 21. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 21 ベンチャーの前提は、「新しい価値を創造すること」。そのためには、志が高くなければ ならないのだと思います。志の高さは時間軸に比例するものです。ベンチャーと大企業で はケーパビリティ(能力)がまったく違います。資本力、実行力でかなわないのだから、よ り長期を見据えなければならないというのが当たり前の現実です。つまり、ベンチャーは 大企業に、すらりと、「それいいね」と受け入れられるようなことを言っていては、ダメと いうことではないでしょうか。 恐らく私らが掲げる「有価証券報告書・六法全書・世界の歴史の完全ビジュアライズ化」 という考え方は、時間軸としては少し先のものかもしれません。ただ、大企業が XBRL を採 用している時代に、私たちが同じように XBRL をやっていてはかなわないわけです。 ベンチャーは、ポスト XBRL、ポストグーグルの世界を生きなければならない。 情報がすべて揃う時代に、どういうふうに「意味」に変換するか。そこを考えなければ、 価値はないのです。物事を見る時間軸の長さがモノを言います。 ハーバードの調査で、卒業生の経済的な価値を決める決定的な要素は何か、というもの がありましたが、20 年間の分析した結果、その要素はひとつしかなかった。それは、物事 を見る「時間軸の長さ」だけでした。ベンチャーは、より長期で物事を見る必要があると いうことです。 あとは「ロマンとそろばんのバランス」も大事です。いやらしい話かもしれませんが「夢 を語ることによるコストの繰り延べ」という考え方があります。具体的にはストックオプ ションです。資本力の乏しさを長期で補填していくという意味で、現実的な考え方といえ ます。シェアーズはまだストックオプションを発行していませんが、長期のヴィジョンに コミットするメンバーには、少しずつ株式を保有してもらいたいと思っています。 経営者とは、「ヴィジョンの守り主」兼「会社の管理人」。ストックを保有するとは、創 業者利益を確保する、という以前にこのような意味があるのだと思います。 すべては“外部化”できる さて、いきなりものすごく細かい話ですが、スタートアップの実務的な話をします。先 に触れた“外部化”の大切さにつながる話です。
  • 22. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 22 まず、ホームページを作る際に役立つのが「Color Me Shop!」。安く柔軟性のある物販サ イトが作れます。「イーバンク」は振り込みコスト低減に有効です。なんと 1 回 150 円です。 しかし会社は都市銀行に口座を開設しなければなりません。そこで電子決済すると 750 円 かかります。そこで、2 つ口座をつくって、都市銀行は入金口座にしてイーバンクは出金口 座にすれば、コストを低減させることができます。 会社をつくる際は、行政書士にお願いするべきです。15 万円でできます。最初は、エゴ もあるし、お金もないから、自分でやろうとしてしまいますが、基本の方針は外部化です。 外部化を恐れてはいけません。外部化を嫌がるのは無知とエゴからくる考えです。強み以 外は、すべてアウトソーシングする心持ちが大事です。それが単なる個人事業主になるか、 会社をつくるかを分けていきます。 もちろん税理士は絶対に雇うべきです。税金対策は、長期では価値がありません。それ より本業での価値創造を徹底的に考えたほうが効率的です。税金対策のために会社をやる のは、本当にやめたほうがいいと思います。絶対に IPO を目指すべきです。それも IPO と いう目標のために目指すのではなく、自分の会社を社会的存在にするためにやる。本質的 な意味で、「パブリックオファリング」をする(公に問う)ということです。税金対策で会 社をやるんだったら、もっとコストを下げる方法はあります。またグレーゾーンの会計処 理もやめたほうがいいです。そういう生き方は幸せにはつながりません。 あとは電話秘書と「とらば~ゆ」の利用です。人を採用する際は、仲間に声をかけるの ではなく、マーケットから調達したほうがいいです。案外、友人と事業をするのはコミュ ニケーションコストがかかるものです。採用コストは 10 万円程度みておいたほうが良いで しょう。より良い人材を求めるなら、コストをかけるべきです。また、事務所は、やっぱ り「ちよだプラットフォームスクウェア」です。見栄を張って、高い事務所を借りると後 が大変です(笑)。 ひとつ言っておきたいのは、最初に借入だけはしないこと。会社員で起業資金が貯まっ ていない人は、まだ会社でやるべきことがあるというメッセージかも知れません。今は 1 円でも起業可能ですが、昔、株式会社を作るのに資本金 1,000 万円が必要だったのには、 それなりの理由があったのではないでしょうか。起業の敷居を制度的に下げるのは、本質 的ではないと考えます。 エースからリーダーを目指す
  • 23. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 23 「無知とエゴ」の話に関連し、もうひとつ言っておきたいのは、経営者として目指すべ き人間像についてです。 大前提として言っておきたいのは、会社を辞める人は、会社のエースでなければなりま せん(自分のことは棚に上げて申し上げるのですが・・・)。つまり、会社員として「桁違い」 に優秀じゃなければ、独立するべきではありません。今の環境で、優秀でなければ世界を 変えるようなことはできません。会社がイヤで辞めるというのではダメです。独立前に目 指すべきは、会社のエースです。スキルを磨き、卓越した成果を出さなければなりません。 20 代~35 才ぐらいまではスキルを拡充する時期だと思います。 ただし、独立後はスキルだけではダメです。愛、つまり思いやりが必要となります。人 間としての器です。それがあると会社は大きくなれます。 エースからリーダーを目指さなければならない。リーダーは、リードをするのであって、 自分でやるのは非常に難しいことです。自分でやろうと考えるのは無知とエゴの諸産物で す。歴史を振り返ってみても、事を成す人は、物事を任せることができる人です。ローマ のアウグストゥス(オクタビアヌス)は、ローマの優れた皇帝といわれ、シーザーと並ん で有名ですが、彼は病気がちでほとんど戦場でも戦うことができなかったそうです。だか らいつもテントの中にいました。その分、人を使うのがすごく上手く尊敬されていました。 松下幸之助しかり、成功者には病弱な人が案外多い。なまじスキルと体力があると、自分 でやって自分が一番だと思ってしまう。これが優秀なエースの最大の罠かもしれません。
  • 24. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 24 © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. スキル • 10代~20代に 目指す方向性 は、「エース」 クラス *愛とは、「思いやり」であったり、 「人に多くのインセンティブを与える事」である • 独立後(30歳以降) は「愛」に対しての 理解と実践により、 より幅が広く、深い 人間(リーダー)を 目指す 大 大小 愛* 辿るべきキャリアルート エースからリーダーへ スキルではなく、愛(器)が求められる。 時間器の大きさ 愛 スキル 長 大 軸を変えてみると・・・ 図 3 キャッシュフローとヴィジョンのバランス 経営者に求められるもうひとつの要素は、バランスです。 「キャッシュフローとヴィジョンとの整合性」というバランスをとらなければなりませ ん。会社である限り、稼がなければならないし、ヴィジョンとの兼ね合いも考えねばなり ません。頼まれた仕事を何でもやるのではダメです。そして、カネになるからやるという のでもダメです。カネにならないからやらないというのもダメです。ヴィジョンとの整合 を考えながら、長期、短期でキャッシュフローを考えることが大事です。そのバランスが ムズカシイのだと思います。それを意識して事業ポートフォリオを創らないといけないと いうことです。 ただ、個人的視点での意思決定の最後の決め手は、“思いやり”というか、“ハート”。 頼まれたら、「仕方ない! やるしかない!」という場面もあります。そういった“愛”が 長期で効いてくることもあるのではないかと考えています。
  • 25. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 25 SShareshares (B to C) B to BB to B コンサルティング 企業 研修 ビ ジ ョ ン と の 整 合 性 大 大小 キャッシュフロー 事業ポートフォリオ © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. ビジョンと短期のキャッシュフローのバランスを取りつつ、一番やりたい方向へ向かう。 1から育てるということとバランス 図 4 「仕入れと販売」のバランスをとる もうひとつ、バランスを取らなければならないのは、「仕入れと販売」です。私たちの場 合の仕入れは、大半が人と情報になります。それらの切片と傾きをどうするかを考えなけ ればならない。つまり、どう仕入れて、どう売るかです。 人の仕入れコストを抑えるなら、インターンで雇う、時給制にする、あるいは成果報酬 型にするというやり方もあります。売上の伸びに応じて、仕入れを考え、利益を調整する わけです。 ただ、ここで言いたいのは「利益が出たから万歳!」ではないということです。事業が ヴィジョンへの道のりと考えると、利益=設備投資コストでなければなりません。利益を 投資し、次の事業に回し、ヴィジョンに近づいていかなければなりません。 利益しか見ていない人が多いようです。利益は単なる中間地点であって、利益は所詮、 フローを期間で切ったものにすぎないのです。フローは永遠に続いていくものです。利益
  • 26. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 26 が出てもそれで終わりではないということを、是非、認識してほしいと思います。 仕入れ 販売 価値付加 スキーム 仕入れ価格より 販売価格の傾きを高くする 仕入れを固定にするが、 販売も仕入れ価格以上の 固定に設定し安定を狙う 仕入れの傾き < 販売の傾き 仕入れの切片 < 販売の切片 仕入れを固定にするが、 販売はその固定費以上の切片 と、傾きを設定する 仕入れの切片 < 販売の切片+傾き © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 仕入れと販売のバランスをとる(Y=ax+b) 事業には「仕入れ」と「販売」があることである。「傾き」と「切片」をいつも意識してバランスを 取りながら価値を乗せるという事を実施する。 図 5 資本政策についても、多少触れます。会社設立は資本金で賄います。その後、製品やサ ービスをリリースしていきます。そこで、会社の価値(バリュエーション)が 1 億円程度 になってもまだ資金調達は行なわないほうがいいです。 1 億円とは、社会的価値のある事業において、プロトタイプとクライアントがある状態で す。銀行からの借り入れや市場調達を行なうのは、せめてバリュエーションが 10 億円程度 になってから。ここではじめて、成長資源として次のステップに行くための調達を行なう のがいいでしょう。
  • 27. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 27 会社づくりのフェーズ バリュエーションに基づく資本政策 会社をつくる プロトタイプの製品/サービス をつくる バリューマトリクス1.0 進化版の製品/サービスをつく る バリューマトリクス2.0 資本金 1億円程度の価値を創造するも、 調達は未実施 10億円程度の価値を創造し、調 達を実施 銀行より借り入れ(4%コスト)、 市場より調達(15~25%コスト: IRR5年) 資産 BS 資本金 300~ 1,000 資産 資本金 1,000 前受金 300 資産 資本金 10,000 借入 3,000 前受金 800 © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 資本政策のバランス きちんとした資本政策をするまで 図 6 ビジネスプランは書いて書いて書きまくる 事業が続いていく限り、ビジネスプラン作りにも終わりがありません。私の日曜日は、 近所のデニーズでのビジネスプラン作りが中心です。こちらからメニューを頼まなくても、 いつも食べる「Chef’s Cobb サラダ」と「ドリンクバー」が出てくるぐらい、すっかり常 連化しています。それも寂しい話ですが、ビジネスプランは、とにかく事業の本質がわか るまで書き直します。ただ頭で考えているだけでなく、書くことが大事です。 私のプランは相当古いものから残っています。たとえば、銘柄分析システムのようにプ ラン通り実現しているものもありますが、プランの内容はどんどん変わっていっています。 繰り返しになりますが、シェアーズの本質は、「さまざまな視点や切り口をより多くの人 と分かち合う」ことだと考えています。そのなかで、金融事業の本質は、「投資に関する敷 居を下げ、社会的摩擦コストを低減する」ということです。私たちは、そうやって日本の 金融業界を根底から変えていこうとしています。 トレーディング(短期売買)中心の現在の市場で儲かるのは、手数料を取る証券会社だ けです。このような収益モデルにおいて証券会社が儲かるのは社会的な摩擦コストに過ぎ
  • 28. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 28 ません。 そうではなく、ある会社を信じ、愛をもって投資をし、長期にわたってリターンを得る。 そうしたインベストメント(長期投資)の発想が広がれば、社会的摩擦コストが減ると思 います。そのための知識や情報を共有したいと考えているのです。 日本経済の発展の本質は、終身雇用にありました。終身雇用の本質は、社会関係摩擦コ ストが極めて低いことです。つまり皆が、表面的によい会社へ次から次へと移っていって いたら、技術の承継、企業文化の醸成はなかったと思います。UR(都市公団)の宣伝では ありませんが、「人が触れあい、こすれ合いながら、深まっていったこと」こそが、日本の 発展の一番の原動力だったと思います。その意味で、人材派遣や転職市場の発展による人 材の過剰流動性には、私は同意できないし、生まれた子どもをすぐにベビーシッターに預 けるウォール街の風潮は異常だと思います。社会的一体性が大事だと思うのです。 証券・投資も同じです。企業と投資家(市民)が長くつきあう関係を構築してゆくこと こそが、長期でみた社会生産性を高めるのだと、私は今、思っています。 しかし私たちもまだまだビジネスプランを書き直す必要があります。永遠に書き続ける ことが仕事のような気がします。書いたものは、隠してはなりません。オープンにするこ とが大事です。あらゆる人に話し、フィードバックをもらうべきです。そうすることが価 値向上につながります。 そう考えると、特許って何のためにあるのだろうとも考えます。少なくとも個人的報酬 ではありません。いつの世も報酬というのは内在的なものです。特許を取るぐらいの社会 的インパクトがあるようなアイデアは、外的欲求、たとえばカネをくれるから発明すると いうロジックでは、なかなか生まれません。発明は内的に起こるもので、神様が授けてく れるものだと思います。要するに金銭的なインセンティブの担保のために特許があるとい うのはおかしいのです。 そうすると、成長のための資源として、競合の事業スピードを押さえ、アイデアを現実 化するための時間をケアしてあげますよ、というのが特許の本質なのだと思います。発明 に対し、個人的に何百億くれというのはすごくナンセンスです。第一、そんなに使い切れ ないでしょう。 私は、ウォーレン=バフェットやビル=ゲイツの成果に関しても、ネガティブな部分が あると思います。バフェットやビルは、稼ぐ力は桁違いにあったと思いますが、カネをう
  • 29. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 29 まく使う力があるかどうかはわからないからです。巨額の富を社会にうまく分配できるか どうかは別だと思うのです。彼は、エイズの撲滅にものすごい寄付をするかもしれません。 しかし、世界的な医療問題の重要課題は、実はエイズではないかもしれません。環境問題 として現在焦点が当てられている二酸化炭素やオイルよりも、水の問題のほうが大きいか もしれません。 色々な研究結果を見ると、世界の物質的な富の分配においては、慎重にやらなければな らないと感じます。カネを持っている人がカネをうまく使えるかどうかは別であり、それ は社会的に大きな問題だと思うのです。シェアーズは、そのような社会資本の循環になん とか寄与できないものかと考えています。 あとは、事業が軌道に乗るまでに 3 年はかかることを覚悟するべきです。少なくとも、 私は 2 年たっても成功できていません(笑)。「石の上にも 3 年」を肝に銘じましょう。 書かない 紙へ 紙へ 考える 考える 考える 考える 紙へ 考える 堂々巡り 価 値 の 大 き さ ( = 思 考 の 深 さ ) © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. コツは「何回も繰り返して創る/作ること オープンであること あらゆる人に話す&フィードバックをもらう 軌道に乗るまでには3年はかかることを覚悟する 事業の本質が分かるまで書き直す 社会価値を高める内容であるか? ビジネスプランのコツは何度繰り返すか、にある 図 7 モグラ叩きはほどほどにする 本質を考え抜く。この作業はあらゆる場面で大事です。事業をやっていると、さまざま な問題が噴出しますが、しかし表面的な事象に踊らされてはダメです。“モグラ叩き”はほ どほどにするべきです。問題の核(コア)、メスを入れるべき根本原因を見すえ、目に見え ないスイッチを切らない限り、モグラは永久に顔を出します。 目に見える現象(表出的問題)の方がよく見えるのでわかりやすいのですが、本来は、 問題解決のために“多くをする”必要はないのです。たったひとつの決定的に大事なこと、
  • 30. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 30 目に見えないホットボタン(本質)にメスを入れるという考え方が大切です。 一見目に見えないスイッチを切らない限り モグラは、永久に顔を出す・・・ スイッチ (ホットボタン) “モグラ叩き”が失敗の原因・・・ 普通の人にはモグラしか見えない • メスを入れるべき根本原因 • ホットボタン • 核(コア) • 最もカユい場所 • キードライバー © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. あせりはわかるが、もぐら叩きは、ほどほどにして・・・・ 解決策の立案に当たって最も重要なことは、モグラたたきをしないこと。 目に見える現象に対処するのではなく、目には見えない問題の本質にメスを入れること。 図 8 成果 力 業 戦略的思考 本質 表出的問題(=モグラ) (良く見える。わかりやすい) (見えない。洞察が必要) 普遍 不変 単純 © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 本質論:力業で勝負するより、本質的問題に梃入れをする 戦略の本質は、レバレッジ(梃子の原理)を働かせることにある。 問題解決のために、“多くをする”必要はない。たった一つの決定的に大事なこと、 ものごとの本質を考え抜いてしっかりと捉え行動することにつきる。 図 9 ビジネスをブラッシュアップさせる 5 つの言葉 ここで、経営者として覚えておくと有効だと思われる言葉をいくつか紹介します。 まずは(1)「レバレッジ」。小さなインプットで、大きなアウトプットを出すことを意味 します。 次に(2)「スプレッド」、価値と価格に差があることです。優秀な企業家は、スプレッド
  • 31. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 31 を探すのが得意です。社会のニーズとすでに提供されているものにスプレッドがあるかど うか、他社と自分の会社にスプレッドがあるかです。 たとえば、スプレッドをうまく見つけた企業の例に、リプラスという会社があります。 家賃保証ビジネスを最初に展開した会社ですが、目のつけどころが鋭いです。これまで、 不動産を借りる際の問題は、保証人を見つけることでした。とくに外国人などは非常に苦 労していたのではないでしょうか。 そこで家賃回収を同社が保証し、加入者は 2~3 万円を対価として支払います。オーナー にとっては、家賃未回収のリスクヘッジができ、入居者は敷金や保証人といった、従来の 慣行にしばられる必要がなくなります。当時の社会のニーズと、提供されているもののス プレッド(ニーズがあり、供給がなかった)にピタリはまったビジネスだと思います。 頭がいいなあと思いました。いわゆる民間の生命保険ビジネスに近い考え方です。生命 保険の本質は、社会全体でボラティリティ(リスクの変動)を下げるということ。私はこ れまで生命保険を否定していたのですが、浅はかだったなと思います。確かに個人的視点 で見ると保険に加入するのはナンセンスなのです。自分が死ぬ確率(あるいは入院する確 率)と、保険にかかるコストを割り戻して考えると、もらえる保険金が割に合わない。な ぜなら「胴元」である、保険会社が鞘を抜くからです。しかしこれは小さい話だなと思い ます。社会全体でみると、国民全体のヘッジをみんなでしようという発想に基づいていま す。社会全体のボラティリティを下げて、個別に徴収するというモデルは社会的で美しい と思います。 また、スプレッドについて、先に触れた XBRL の登場について考えてみましょう。その登 場の意味は「財務情報に価値がなくなる」ということです。つまり市場経済における財務 情報のスプレッドがなくなるからです。そこにシェアーズのビジネスチャンスがあるわけ です。 そして(3)「リアライズ」。事業のプランでも何でも、考えているだけで実現しなければ 意味がありません。realize には、収益源である価値を、価格として顧客に販売する、とい う意味があります。 最近、重要視しているのは(4)「エフェメラライゼーション」。耳慣れない言葉かもしれ ませんが、「一度きりの実行をより効率化する」ことを意味します。セミナーを何回も開催 することは物理的に難しいので、セミナーを収録した DVD を作成する。コンサルティング プロジェクトもエフェメラライズする。1 回使ったものを、エンジニアリングを使ってウェ ブで配信するなど、自動化する仕組みです。
  • 32. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 32 自動化するという意味では、(5)「マニュアライズ(=仕組み化)」も有効です。マニュ アルというとネガティブなイメージを持つかもしれませんが、私自身も最近やっと、業務 をマニュアル化すれば創造的業務により時間をあてられることに、遅まきながら気づきま した。シェアーズで評価される人材は、全体最適を考えられる職人と、しくみを設計し、 導入できる人です。 その点で、コンサルティングはテーラーメードなので、マニュアライズの意義は小さい です。社会全体で見ると、価値基準が低いわけです。しかしそこをなんとか、コンサルテ ィングのノウハウをマニュアライズして、資源を有効活用します。コンサルティングのバ リューを、エンジニアリングで広く提供すれば、社会的価値をより上げることができます。 またコンサルティングというサービス自体も、「遠隔経営企画室」としてフレームワーク をやり取りしながら、事業部を超えた情報交換・知識流通を実現していくことができるも のです。 くり返しになりますが、知の流通こそが私のビジネスの根底にある考え方です。 システム リアライズ レバレッジ (エフェメラライゼーション) スプレッド © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 経営者が使うと良い言葉 レバレッジ 小さなインプットで、大きなアウトプットを出すこと スプレッド 価値と価格に差があること リアライズ 実現化すること エフェメラライゼーション たった一度きりの実行により、効率化をすること マニュアライズ 仕組み化 図 10
  • 33. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 33 論点と選択肢を 4 つずつ出す 経営とは、意思決定の連続作業です。 キャッシュフローとヴィジョンのバランスをとりながら、意思決定し、一番やりたい方 向に向かいます。問題が起こったら、物事の本質を見極め、解決に向け意思決定をします。 意思決定で大事なことは、納得するまで考えることです。そして、比較検討を実施する ことです。それには日ごろからの訓練が必要です。 例えば、最近、個人的に取り止めた意思決定がありました。引っ越しです。オフィスの 引っ越しは、固定費の構造を大きく変えるため、きわめて重要な意志決定です。いい物件 が見つかったのですが、土壇場で止めました。物件が悪かったわけではない。単に選択肢 を出し切っていないと感じたからです。不動産業者がたまたま紹介してくれた物件で即決 していいものか、と。 直感を信じて上手くいく場合もありますが、経営者のあり方としては良くないと思いま す。「直感でいいと思った」では、カリスマ経営者ならまだしも、周りに説明がつきません。 私は、直感よりも事実を重視します。 日ごろから、論点を 4 つ、選択肢を 4 つ出し、○×をつける。小脳を使った経験的判断 をしないことです。いつも大脳を使ってゼロから考えます。意思決定を失敗しても、理論 化して説明できるようにすることが大事です。そもそも考えることを習慣づければ、意思 決定の失敗は減っていくと思います。 数ヶ月前に、事務職の募集をかけたのですが、採用は大成功でした。それは、30 人に会 い、解析して出した結論だからだったと思います。友達を採用してはいけない。つまり近 場にある資源を有機化して、事業に持ってこようとしてはダメです。 どんな場合でも、意思決定はとことん納得するまでやらなければなりません。ただし、 最後はハートで決めましょう。右脳左脳をフルに使って考え、キャッシュフローとのバラ ンスを考えながらも、ハートで意思決定します。これが意思決定のあり方だと考えていま す。
  • 34. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 34 論点 選択肢 必ずこの内部で 比較検討を実施する! 納得するまで考える 問題発生/ 問題発見 問題発生/ 問題発見 意思決定の流れ 問題 右脳/左脳 ハート 意思 決定 意思 決定 決定 © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 頭で考えて、整理し、ハートで判断する BESTを目指す事から、BETTERを積み上げる方向へシフトする。 論点と選択肢をいつも持ち、意志決定に活かす。 図 11
  • 35. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 35 4 章 人、人、人――大事なのは愛。そして愛。 人こそが経営の要 いよいよ、 “人”の話に移りたいと思います。 現在、ブルー・マーリン・パートナーズに在籍しているのは、ルーマニアの国費留学生、 有能なインターンの大学 4 年生、完璧に事務をこなしてくれる女性、天才的システムエン ジニアなど約 15 名です。多種多彩、ユニークな人材に恵まれています。ただ、何回も言っ ているように、ここに至るまでは失敗続きでした。 私を助けてくれた人々のうち、何人かは去っていきました。 自分の夢ばかり追いかけ、人の気持ちに思いが至りませんでした。それでは上手くいく わけがありません。さらに失敗続きで焦って余計に上手くいかない…。悪循環でした。 経営者のエゴやプライドは、事業の大きな妨げになります。そして、“人”の問題こそが、 経営の要であり、かつ経営者が一番悩むフィールドだと思います。 従業員 全人格 優秀な点 ここにフォーカスして雇用する (誰にでも優れたポイントは存 在するため、そこが分かる/ 見える人を雇用する) 優秀な人材の見つけ方 © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. 人・人・人・・・ その人自身が自分よりも優れた能力を有する人と働く その人の全部を受け入れようとしない 人として扱う コミュニケーションをしっかりとる 失敗を多くおかす 図 12
  • 36. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 36 人と接する方法 私が経験から学んだポイントを 5 点挙げます。 まず、(1)「自分よりも優れた能力を有する人としか働かない」ということです。絶対、 ある部分では自分より優秀であると信じられる部分がなければなりません。 そして(2)「その人の人生すべてを受け入れない」ことです。経験から言って、人生、つ まり全人格を受け入れようとすると、ビジネスが立ち行かなくなります。優秀なポイント、 つまり会社のヴィジョンに資する部分だけにフォーカスし、そのバリューに着目するべき だと思います。自分を含め、完璧な人などいないのだと思います。 次に、(3)「人を人として扱うか、あるいはモノとして扱うか」。これは究極的命題です。 先ほども述べたように、個々人の全人格を受け入れようとすると経営が立ち行かなくな ります。ある意味、自分も含め、「人を単なる経営資源として扱う」ような突き放した部分 が必要ではないかと考えています。 ただ、個人としては「人を人として」扱わなければならなりません。(4)「コミュニケー ションをしっかりとる」ということが大切です。コミュニケーションの量は質に転嫁しま す。 ひとつの取り組みとして、当社では、3 月からタイムシート制を導入しています。 タイムシート制には、目的が 3 つあります。1 つめは案件のコストと経費を把握する経営 資料とするためです。2 つめは、時給制の人に対しての報酬をフィックスするためです。そ して 3 つめは、その人の生産性と業務内容をトレースする資料とするためです。つまりフ ィードバックする材料として使うことです。 1 つめの経営資料としてだけ利用すると、タイムシート制導入は失敗します。末端の社員 が適当に記入するようになるからです。大事なのはフィードバックです。タイムシートを 出してもらったら、月に 15 分でも時間を取り、個人ベースでフィードバックをします。コ ミュニケーションをしっかりとることが、内的モチベーションを上げていくための重要な 作業です。 そして最後、(5)「失敗を多く犯すこと」。失敗を早くして、倒れて、なぐさめてもらっ
  • 37. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 37 て、立ち直って、また戦うことです。要は早くたくさん失敗して学ぶということです。く り返しが大事だと思います。そのためには、なぐさめてもらえるように、周りの人に日ご ろから功徳を積んでおくことが大事なのかなと(笑)。プライベートでパートナーがいるの に超したことはないですが、友人でも家族でも信頼できる人なら誰でもいいと思います。 とにかく事業で大事なのは、人に尽きるという話です。 最大のコストは経営者のハート そろそろ、事業における最重要課題、経営者自身のマネジメントについて述べていきた いと思います。2 年間やって、“人”の問題に並んでの失敗は、自分のメンタルマネジメン トでした。 会社を辞めるとわかることですが、ものすごい空虚感に襲われるものです。むやみやた らに寂しくなります。昔の同僚とランチしたくなり、お金を使いたくなります。ストレス で不安がずっとつきまといます。視点が短期的になり、プランが思うように進まなくなり ます。欲深くなって、プライドが出て…などなど。 事業における最大のコストは、経営者のハートです。 シェアーズのビジネスプランと実際のスケジュールは、オンタイムではなく半年ぐらい 遅れています。原因のひとつは、当初、私の体調が悪く、進行が遅れたことですが、焦り や不安、ネガティブな感情が物事を遅らせたという点も大きいと思います。 2006 年、2007 年をピークに、自信がなく、人に会うのが怖いぐらいの時期が続きました。 もちろんこれは私だけに限った話ではありません。他の社長の話を聞いても、同じような 経験をされているようです。 感情のブレを徹底して排除するためには、「いかにリラックスするか」が非常に大切です。 リラックスするための出費は「経費」 起業当初、高級ホテルに泊まったりしていたことがあります。昼の 11 時にチェックイン して、寝たり、お茶を飲んだり、公園を歩いたりしました。フィットネスをしてディナー をとります。ただし、ムダづかいをする自分を責めたりする自分もいて、あまり効果的で
  • 38. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 38 はありませんでした。 今考えれば、これはむしろアリだと思います。日々、落ち着いて、しっかりとした判断 をしていかねばなりません。経営者のマインドが揺れていることこそが最大のコストです。 経営者にとって、リラックスのための出費は完全なる「経費」だと思います。税理士に、 経費としてきちんと認めさせるべきです。もちろん現実には無理なのですが・・・。 また当然ですが、「きちんと休む」ことが大切です。「かかりつけの医者やセラピストを 持つ」ようにしましょう。瞑想やアロマもいいし、運動も必要です。非科学的ながらも実 用的なことは多くあると思います。 科学は決して万能ではありません。科学はまだ真実を見つけていないと思います。 たとえば、意識を科学は解き明かしていないと思います。 皆さんは、意識がどこにあるかわかりますか? 「意識を意識する」という体験を是非して頂きたいと思います。私の場合、意識をハー トの部分にもってきて、エネルギーが地球の底から、自分の中に流れ込んでくるようなイ メージをわかせます。目をつぶって、ハートを意識します。そうすると平安な気持ちにな れます。 常に、心の平安を自分で「選択」できるように訓練をしてみてください。自分の意識を へその下に 3 分維持できるようにしてみてください。きっと実際的・物理的に大きな変化 が起こるでしょう。私の場合、このようなことが少しずつできるようになってきて、落ち 着きを取り戻すことができました。 お金がない時代があり、お金を求める時代があり、お金に翻弄される時代があり、心と 体が乖離する時代がありました。プライドを失った時代、愛を失った時代がありました。 嫉妬とか金とか、騙し合ったり脅されたり、いろいろしてきました。 しかし、ただ、目を閉じて、幸せだなと意識を変換するだけで、幸せを見つけることが できると知りました。いつも答えは自分の内側にありました。それは古くからの真実です。 様々な外部刺激のなかで、最終的に自分の中から出てきた結論は、「幸福は、“選択”で きる」という確信です。私を含め、多くの人は、お金があると安心だと思います。いろん
  • 39. Copyright 2008 Blue Marlin Partners, Inc. 本資料の全部または一部に係わらず複製ならびに複写および引用を禁じます。ご活用・編纂をご希望の方は、 info@bluemarl.in までご連絡ください。無断使用の場合には法的手段を行使する可能性があります。 39 なものを買う、食べる。それは幸せです。しかし自分はそのような物質的欲求を小さくで きるといいなと考えています。 目を閉じて、幸福を選択すれば幸福になれる。モノはいらなくなります。少しずつ執着 がとれて、お金もいらなくなります。するとお金とはなんだろうと考え始めることになり ます。社会におけるお金の位置づけと、人と人とのコミュニケーションにおけるお金以外 の代替手段の可能性について考え始めました。 コミュニケーションツールは、深さと広さという軸のなかで、お金以外にも言語やロジ ック、数字、宗教やボディランゲージまで無数にあり、それらは代替可能だということが わかってきました。あるものは狭いけど深い、あるものは汎用性があるけど浅いのです。 © 2008 Yohei Yamaguchi All Right Reserved. さまざまなコミュニケーションツール コミュニケーションツールは無数にあり、その深さと汎用性には幅がある。 図 13 たとえば、「ロジック」というツールは、非常に汎用性が高いけど、もう少しコミュニケ ーションの深さを追求したいときには使えません。仕事の現場のなかで、より内的・意識 的なコミュニケーションツールを使って、ほかの同僚とコミュケーションしたほうが効率 的なケースは多くあり、そのような企業は長期にわたる実績を上げています。逆にロジッ クでないと話が通じない組織はもろいのです。 私は、究極的なコミュニケーションツールは愛だと思います。