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60分でわかる
感染症診療の基本
Presented by Kotaro Hayashi
Nagoya City University Hospital General Internal Medicine
改訂第3版 2016/12/04
はじめに
参考資料は最後の方にあります
医学部6年〜初期研修医を想定
感染症診療を始めて学ぶ人向け
あくまでシニアレジデントがまとめたもの
→詳しくは成書を参照
本日のプログラム
ルール
を知る
微生物
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抗菌薬
を知る
発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
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発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
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メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
ルール
を知る
ルールを知る
ゲームと同じでまずはルールから入りましょう。
感染症診療は覚えることが多い
微生物と抗菌薬についての知識が必要
それだけでなく
ルールに則って診療を行う必要がある
本日のプログラム
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抗菌薬
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発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
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発熱≠感染症
現実には時々見受けられます。残念ながら…
発熱の原因は感染症以外にも多数
感染症でも抗菌薬不要のものある
したがって、発熱やCRP上昇のみを根拠に
抗菌薬を開始しない!
Tierney LM Jr et al: Current Medical Diagnosis and Treatment, 39th ed. McGraw-Hill, 2000より改変
重要な発熱原因の例
感染症 ウイルス,細菌,リケッチア,真菌,寄生虫
自己免疫疾患 SLE,血管炎,リウマチ熱,リウマチ性多発筋痛症,成人発症Still病
中枢神経症 脳出血,外傷,脳腫瘍
悪性腫瘍・
血液疾患
腫瘍,リンパ腫,白血病,溶血性貧血
心臓血管系 心筋梗塞,肺塞栓,血栓性静脈炎
消化器系 炎症性腸疾患,肝膿瘍,肉芽腫性肝炎
内分泌系 甲状腺機能亢進症,褐色細胞腫
化学物質 薬剤反応,悪性症候群,悪性高熱
その他 サルコイドーシス,組織損傷,血腫,詐病
膠原病・腫瘍のほかに血栓症でも発熱することに注意。
岸本暢将,岡田正人,徳田安春 (2014). 研修医になったら必ず読んでください 羊土社 より改変
抗菌薬の原則不要な感染症
小児の急性滲出性中耳炎
急性咽頭炎(A群連鎖球菌以外で膿瘍なし)
気管支炎(基礎疾患なし)
急性副鼻腔炎(発症1週間〜10日以内で軽症)
急性腸炎(非旅行者で軽症〜中等症) ※抗菌薬投与で逆に増悪することあり
無症候性細菌尿(妊婦,泌尿器科手術前患者以外)
抗菌薬が不要な感染症を覚えておくことも重要です。
本日のプログラム
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発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
感染症診療のトライアングル
感染症のトライアングルモデルを見ていきましょう。
抗菌薬の選択には
・患者の免疫状態
・感染臓器
・原因微生物 の把握が必須!
感染症診療のトライアングル
矢野晴美 (2010). 絶対わかる 抗菌薬 はじめの一歩 羊土社 より改変
感染症診療のトライアングル
矢野晴美 (2010). 絶対わかる 抗菌薬 はじめの一歩 羊土社 より改変
・どのような免疫状態の患者で
・どの部位の
・どのような微生物による
感染症なのか?
感染症診療のトライアングル
矢野晴美 (2010). 絶対わかる 抗菌薬 はじめの一歩 羊土社 より改変
・どのような免疫状態の患者で
・どの部位の
・どのような微生物による
感染症なのか?
・この抗菌薬を
・この用量で
・この期間
投与する!
おまけ:投与量と投与期間
ときどき「おまけ」が出てきますが、学生さんは読み飛ばして
もOKです
いきなり全部覚えるのは無理
サンフォード「熱病」マニュアルなどを
参考にしてください
大切なのは、バイタルサインや意識状態、
食事摂取量などを指標にすることです
本日のプログラム
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抗菌薬
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発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
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培養の重要性
これを最適治療(definitive therapy)と言ったりします。
抗菌薬の投与前には必ず培養を提出しておく
培養の結果(薬剤感受性)を確認
→最適な抗菌薬が選択できる!
Fever work-up
血液培養は静脈でOK、必ず2箇所から採取します。
臨床的に感染症を鑑別するためのルーチン検査
・血液培養2セット(嫌気好気あわせて4本)
・尿一般検査+尿培養
・胸部単純X線写真
必要に応じて喀痰培養や便培養を追加
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グラム陽性菌 グラム陰性菌
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初期治療とde-escalation
経験的治療(empirical therapy)とも言います。
初期治療:
患者背景と感染臓器から想定される起炎菌を
すべてカバーする薬剤を選択
初期治療とde-escalation
耐性化を防ぎ、最小の副作用で最大の治療効果を目指します。
de-escalation:
培養結果(感受性)に従って
初期治療から最適な抗菌薬に変更すること
原則として
歴史的に第一選択とされてきた薬剤に変更
MIC(最小発育阻止濃度)を比較しない!
おまけ:第一選択薬の例
???となった人、大丈夫です。二週目には大体わかるはずです。
Streptococcus spp., E.facalis:PCG, ABPC
MSSA: CEZ
MRSA, E. facium: VCM
PEK, HaM: CTRX
SPACE: TAZ/PIPC, CFPM, MEPM
ESBLs産生菌: MEPM
嫌気性菌: SBT/ABPC, MNZ
非定形菌: AZM, LVFX
小まとめ
まずはこれができるようになりましょう。
発熱・CRP上昇を根拠に抗菌薬を開始しない
患者背景と感染臓器から原因微生物を推定し
抗菌薬を決定する(感染症のトライアングル)
抗菌薬の開始前には培養検査を行い
感受性が判明したらde-escalationを行う
小まとめ
まずはこれができるようになりましょう。
発熱・CRP上昇を根拠に抗菌薬を開始しない
患者背景と感染臓器から原因微生物を推定し
抗菌薬を決定する(感染症のトライアングル)
抗菌薬の開始前には培養検査を行い
感受性が判明したらde-escalationを行う
小まとめ
まずはこれができるようになりましょう。
発熱・CRP上昇を根拠に抗菌薬を開始しない
患者背景と感染臓器から原因微生物を推定し
抗菌薬を決定する(感染症のトライアングル)
抗菌薬の開始前には培養検査を行い
感受性が判明したらde-escalationを行う
肺炎
33%
尿路感染症
32%
皮膚軟部組織
感染症
12%
その他
10%
不明
13%
おまけ:頻度が多い感染症
Most common infections treated with antibiotics in nursing home
source: Benoit et al. J Am Geriatr Soc. 2008 Nov; 56(11): 2039-44.
肺炎、尿路感染症、
皮膚軟部組織感染症
の3つで、全体の
77%
肺炎
33%
尿路感染症
32%
皮膚軟部組織
感染症
12%
その他
10%
不明
13%
おまけ:頻度が多い感染症
これらの感染症を
引き起こす、
重要な細菌から順に
勉強していくと
良いと思います
ブドウ球菌
連鎖球菌
大腸菌>>プロテウス、クレブシエラ
肺炎球菌、クレブシエラ、モラクセラ、非定形菌
院内では緑膿菌、ブドウ球菌
Most common infections treated with antibiotics in nursing home
source: Benoit et al. J Am Geriatr Soc. 2008 Nov; 56(11): 2039-44.
本日のプログラム
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発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
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原則4種類と例外4種類をまず覚えましょう
種類も多数、分類も多数
→まずは4つのカテゴリーに分けて覚える
(グラム陽性菌・グラム陰性菌・嫌気性菌・非定型菌)
それぞれに原則と例外がある
表にすると
かなりざっくりですが、まずはこれを覚えてください
ブドウ球菌の仲間
(グラム陽性菌)
ブ 大
嫌 非
大腸菌の仲間
(グラム陰性菌)
非定型菌嫌気性菌
例外は
例外(耐性菌)も4つのカテゴリーに分けて覚えると覚えやすい
MRSA 緑膿菌
CD 結核菌CD:
Clostridium
difficile
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グラム陽性菌とグラム陰性菌
外膜の構造を次に示します:
簡単に言うと、外膜を持つか持たないか
外膜があるとペニシリン系薬剤が効きにくい
→学問上だけでなく、臨床上とても重要!
どうやって見分けるか?
→グラム染色
細胞壁、細胞膜、外膜
リポポリサッカライドは病原性、ポーリンは薬剤耐性に関与しています。
グラム染色
染色の手順、覚えていますか?
グラム陰性菌が外膜(脂質二重層)を持つことを
利用
手順:塗抹→乾燥→固定→染色→乾燥→鏡検
染色が特に重要
グラム染色
メカニズムを理解すれば、手順も覚えられる!
1. クリスタルバイオレット:10秒
※すべての細菌が紫色に染まる
2. ルゴール液:10秒
※紫色が固定される
3. アルコール:20-30秒
※ここでグラム陰性菌の外膜(脂質二重層)が破壊される
4. サフラニン液:10秒
※グラム陰性菌だけが赤く染まる
前置きが長くなりました…
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グラム陽性菌 グラム陰性菌
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メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
グラム陽性菌
なので、まずは「黄色ブドウ球菌の仲間」として覚えましょう
黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、腸球菌
など
黄色ブドウ球菌が臨床上特に重要
ブ 大
嫌 非
黄色ブドウ球菌
MSSA / MRSA:
methicillin-sensitive / resistant Staphylococcus aureus
ヒトの鼻腔などに常在
血流感染症や軟部組織感染症を起こす
MSSAとMRSAがいる
ブ 大
嫌 非
グラム陽性菌の原則と例外
Enterococcus faeciumもバンコマイシン(VCM)が第一選択ですが、
まずはMSSAとMRSAを覚えましょう
黄色ブドウ球菌の仲間(MRSAと腸球菌以外のGPC)は、
原則としてセファゾリン(CEZ: 第1世代セフェム)で
治療できる
例外として、MRSAはバンコマイシン(VCM)で
治療する必要がある
おまけ:どうしてABPCじゃダメなの?
ABPC: アンピシリン PCG: ペニシリンG PBP: ペニシリン結合タンパク
PRSP: penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae
本当は、感受性があればABPCやPCGを使う
しかし、MSSAでもペニシリナーゼ産生のため
ペニシリン系がきかなかったり
肺炎球菌でも低親和性PBPの産生のため
ペニシリンが効かなかったりする(PRSP)
→感受性がわかるまではCEZが無難
その他のグラム陽性菌が起こす感染症
肺炎と皮膚軟部組織感染症が特に多いです。
連鎖球菌:
咽頭炎や皮膚軟部組織感染症、時に血流感染(心内膜炎)
肺炎球菌:
肺炎や髄膜炎
腸球菌:
カテーテル関連血流感染症など
Clostridium spp.
(クロストリジウム属: C. difficile, C. tetani, C. botulinum, C. perfringens) :
毒素による多彩な症状(偽膜性腸炎や破傷風、ボツリヌス中毒など)
Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌):
毒素による多彩な症状
Bacillus cereus(セレウス菌):
毒素による食中毒や、血流感染(薬物中毒や院内感染など)
Bacillus anthracis(炭疽菌):
毒素によるバイオテロの危険
Listeria monocytogenes(リステリア菌):
免疫不全者の敗血症、髄膜炎
おまけ:グラム陽性桿菌について
毒素産生菌や免疫不全者に悪さをする菌ですね。
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グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
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メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
グラム陰性菌
「ペック、ハム、スペース」と読みます
外膜を持ち、グラム陽性菌よりも病原性が高い
→様々な感染症を引き起こす
尿路感染、気道感染、医療関連感染
「PEK HaM SPACE」と覚える
ブ 大
嫌 非
PEK: 腸内細菌
ゆえに、まずは「大腸菌の仲間」として覚えましょう。
P: Proteus spp. プロテウス属
E: Escherichia coli 大腸菌
K: Klebsiella pneumoniae クレブシエラ
特に、大腸菌は尿路感染症の90%を占め重要
PEKの起こす感染症
便→尿路への感染が多いためです
尿路感染症が重要
Klebsiellaに関しては、肺炎の原因にも
PEKの治療
基本的に、第3世代セフェムを使います
まずはセフトリアキソン(CTRX)
を覚えておきましょう
CTRXには本当にお世話になります。
おまけ:PEKの治療その2
ちょっと難しいので学生さんは飛ばしましょう
PEKは産生するβラクタマーゼによって治療が異なる
TEM-1(プラスミド): ABPC耐性となる
→CEZやCTRXを使う
AmpC(染色体): CEZやCTRXで誘導される
→過剰産生菌ではCTRXが耐性となる
→CFPMやMEPMを使う
ESBLs(プラスミド): CFPMについては意見が分かれる
→基本的にMEPMなどを使う
HaM: 気道感染を起こす菌
次にHaM(ハム)について見ていきましょう。
Ha: Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)
M: Moraxella catarrhalis(モラクセラ)
HaMの起こす感染症
PEKのK(クレブシエラ)も気道感染を起こすんでしたね。
基本的には肺炎
H. influenzaeは髄膜炎の原因にも
HaMの治療
BLNAR: beta-lactamase negative ABPC resistance:
ブルナールと読む
基本的にはPEKと同じで、第三世代セフェムで
OKです
※感受性があればペニシリン系薬剤を使いますが、
βラクタマーゼを産生しないのにペニシリン系薬剤に
耐性の菌(BLNAR型)が増えているので注意です
SPACE
SPACEはこれらの略で、医療関連感染症の原因となりますが
S: Serratia セラチア
P: Pseudomonas 緑膿菌
A: Acinetobacter アシネトバクター
C: Citrobacter サイトロバクター
E: Enterobacter エンテロバクター
SPACE
臨床上もっとも重要なのはダントツで緑膿菌です
S: Serratia セラチア
P: Pseudomonas 緑膿菌
A: Acinetobacter アシネトバクター
C: Citrobacter サイトロバクター
E: Enterobacter エンテロバクター
緑膿菌について
流し台などの湿潤環境に常在する、いわゆる
“water bug”
病院のあらゆるところ(特にチューブ類)に存在
しうる
あらゆる感染症を引き起こしうる
なぜ緑膿菌が重要か
ほんとかうそか、分離される菌のうち9%もいるという話も
遭遇する頻度が高い
使える抗菌薬が限られる
どんな時に緑膿菌を考えるか
弱っている人につきやすい菌だと思ってください。
医療ケア関連肺炎や人工呼吸器関連肺炎
尿カテーテル留置時の尿路感染症
発熱性好中球減少症
カテーテル関連血流感染
糖尿病患者の皮膚軟部組織感染症 など
緑膿菌の治療
特にカルバペネムやニューキノロンは温存したいところです
抗緑膿菌ペニシリン+ベータラクタマーゼ阻害薬:
ピペラシリン・タゾバクタム(TAZ/PIPC)
が第一選択
想定される他の細菌によって、
CFPM, MEPMやニューキノロンを使う
おまけ:他のSPACE等の治療
参考:藤本卓司(2013). 感染症レジデントマニュアル 第2版 医学書院
Serratia marcescens: CFPM. CTRXは疑問符
Acinetobacter baumannii: ABPC/SBT. SBTが単独で有効
Citrobacter freundii: CFPM, MEPM, PIPC/TAZ
Enterobacter spp. : MEPM.
Stenotrophomonas maltophilia: カルバペネム系に自然耐性,
ST合剤やニューキノロンなどを使用
ここまで大雑把なまとめ
まずは原則と例外をざっくり覚えましょう
グラム陽性菌には原則、セファゾリンなどの
第一世代セフェムを使用する
例外:MRSAにはバンコマイシンを使用
グラム陰性菌には原則、セフトリアキソンなどの
第三世代セフェムを使用する
例外:緑膿菌には抗緑膿菌ペニシリンを使用
ここまで大雑把なまとめ
まずは原則と例外をざっくり覚えましょう
グラム陽性菌には原則、セファゾリンなどの
第一世代セフェムを使用する
例外:MRSAにはバンコマイシンを使用
グラム陰性菌には原則、セフトリアキソンなどの
第三世代セフェムを使用する
例外:緑膿菌には抗緑膿菌ペニシリンを使用
ここまで大雑把なまとめ
まずは原則と例外をざっくり覚えましょう
グラム陽性菌には原則、セファゾリンなどの
第一世代セフェムを使用する
例外:MRSAにはバンコマイシンを使用
グラム陰性菌には原則、セフトリアキソンなどの
第三世代セフェムを使用する
例外:緑膿菌には抗緑膿菌ペニシリンを使用
ここまで大雑把なまとめ
まずは原則と例外をざっくり覚えましょう
グラム陽性菌には原則、セファゾリンなどの
第一世代セフェムを使用する
例外:MRSAにはバンコマイシンを使用
グラム陰性菌には原則、セフトリアキソンなどの
第三世代セフェムを使用する
例外:緑膿菌には抗緑膿菌ペニシリンを使用
ここまで大雑把なまとめ
まずは原則と例外をざっくり覚えましょう
グラム陽性菌には原則、セファゾリンなどの
第一世代セフェムを使用する
例外:MRSAにはバンコマイシンを使用
グラム陰性菌には原則、セフトリアキソンなどの
第三世代セフェムを使用する
例外:緑膿菌には抗緑膿菌ペニシリンを使用
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微生物
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抗菌薬
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発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
嫌気性菌といってもいろいろ
いろいろな種類がいますが…
Veillonella spp.
Prevotella spp.
Peptostreptococcus
spp.
Bacteroides fragilis
Clostridium spp.
基本的に口腔内や
消化管内に常在
ブ 大
嫌 非
嫌気性菌が起こす感染症
まずは誤嚥性肺炎を押さえておきましょう。
誤嚥性肺炎
汚染創感染
膿瘍形成
ガス壊疽
Clostridium difficile腸炎
嫌気性菌の治療
Veillonellaはぶっちゃけ何でも効くのであまり問題になりません
Veillonella spp.
Prevotella spp.
Peptostreptococcus
spp.
Bacteroides fragilis
Clostridium spp.
→ ペニシリンが有効
嫌気性菌の治療
その他、抗嫌気性菌活性を持つセフメタゾールなども有効です
Veillonella spp.
Prevotella spp.
Peptostreptococcus
spp.
Bacteroides fragilis
Clostridium spp.
βラクタマーゼ産生菌
なので、
βラクタマーゼ阻害薬
配合ペニシリン系薬剤
を使う
嫌気性菌の治療
ペニシリンGに感受性がある場合はそちらを使用します
Veillonella spp.
Prevotella spp.
Peptostreptococcus
spp.
Bacteroides fragilis
Clostridium spp.
抗菌薬が効きにくい。
嫌気性菌に対しての切
り札である
MNZ(メトロニダゾール)
を使う→
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嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
非定型菌とは
ふつうの菌は染色や培養で鑑別でき、βラクタム系抗菌薬が効きます。
非定型肺炎を起こす、
・染色や培養が困難
・βラクタム系抗菌薬が無効
という特徴を持つ細菌の仲間
ブ 大
嫌 非
非定型菌の仲間
ここでは、結核菌を仲間に入れています
Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ):
細胞内寄生菌. 細胞壁を持たないため、βラクタム系抗菌薬が無効.
Chlamydophla pneumoniae(クラミドフィラ):
細胞内寄生菌. 細胞壁にペプチドグリカンを含まないのでβラクタム系抗菌薬が無効.
Legionella pneumophila(レジオネラ):
マクロファージに感染し増殖=マクロファージによく移行する抗菌薬しか効かない.
Mycobacterium tuberculosis(結核菌):
マクロファージに感染し増殖=マクロファージによく移行する抗菌薬しか効かない.
薬剤耐性を生じやすい.
非定型肺炎について
要するに変な菌が原因で診断や治療が難しい肺炎
血清診断は役に立たず、病歴や身体所見などが重要
とはいうものの、近年はLAMP法による核酸増幅での
診断も可能となってきている
レジオネラに関しては尿検査が可能
非定型肺炎の診断
日本呼吸器学会「成人市中肺炎診療ガイドライン」より改変。
1~5を用いた場合は感度83.9%、特異度87.0%
1~6を用いた場合は感度77.9%、特異度93.0%
1. 年齢60歳未満
2. 基礎疾患がないか軽微
3. 頑固な咳
4. 聴診所見が乏しい
5. 痰がない、または喀痰グラム染色で菌が見えない
6. 白血球数<10,000/μL
1〜5 のうち3項目以上、
もしくは1 〜6 のうち4項目以上が合致する場合、
非定型肺炎の疑いが強い
非定型肺炎の治療
もちろん結核の場合は抗結核薬で治療します
教科書には
マクロライドまたはニューキノロン
と書いてありますが
個人的にはほぼマクロライド(AZM)一択です
(特に結核が否定できない時!)
おまけ:レジオネラの迅速検査について
したがってSpINな検査ということです。
レジオネラの迅速尿中抗原検査:
感度60-95、特異度99%と有用
Legionella pneumophilia serogroup 1
以外の種や、他の血清型は検査できない
ことに注意
おまけ:結核菌の治療
青木眞(2015). レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 医学書院より
INH(イソニアジド)
RFP(リファンピシン)
PZA(ピラジナミド)
EB(エタンブトール)
初期治療:2ヶ月間 継続治療:4ヶ月間
(合計6ヶ月)
ここまで大雑把なまとめ
嫌気性菌には原則、
アンピシリン・スルバクタムなどの
βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンを使用する
例外:Clostridium属には
メトロニダゾールを使用
非定型菌には原則、アジスロマイシンなどの
マクロライドを使用する
例外:結核菌には抗結核薬を使用
ここまで大雑把なまとめ
嫌気性菌には原則、
アンピシリン・スルバクタムなどの
βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンを使用する
例外:Clostridium属には
メトロニダゾールを使用
非定型菌には原則、アジスロマイシンなどの
マクロライドを使用する
例外:結核菌には抗結核薬を使用
ここまで大雑把なまとめ
嫌気性菌には原則、
アンピシリン・スルバクタムなどの
βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンを使用する
例外:Clostridium属には
メトロニダゾールを使用
非定型菌には原則、アジスロマイシンなどの
マクロライドを使用する
例外:結核菌には抗結核薬を使用
ここまで大雑把なまとめ
嫌気性菌には原則、
アンピシリン・スルバクタムなどの
βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンを使用する
例外:Clostridium属には
メトロニダゾールを使用
非定型菌には原則、アジスロマイシンなどの
マクロライドを使用する
例外:結核菌には抗結核薬を使用
ここまで大雑把なまとめ
嫌気性菌には原則、
アンピシリン・スルバクタムなどの
βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンを使用する
例外:Clostridium属には
メトロニダゾールを使用
非定型菌には原則、アジスロマイシンなどの
マクロライドを使用する
例外:結核菌には抗結核薬を使用
ここまで大雑把なまとめ
ブ 大
嫌 非
MRSA 緑膿菌
CD 結核菌
第1世代セフェム
βラクタマーゼ阻害薬
配合ペニシリン
第3世代セフェム
マクロライド
抗MRSA薬 抗緑膿菌ペニシリン
メトロニダゾール 抗結核薬
原
則
例
外
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グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
抗菌薬を知る
ちなみに抗菌薬は一般名か略号でおぼえましょう
臨床で目にする抗菌薬はざっと50種類ぐらい
最初に知るべきなのはたったの数種類
抗菌薬を知る
ペニシリン系
ペニシリンG(PCG ペニシリンG)
アンピシリン(ABPC ビクシリン)
アモキシシリン(AMPC サワシリン)
ピペラシリン(PIPC ペントシリン)
βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系薬
アンピシリン・スルバクタム(SBT/ABPC ユナシン)
クラブラン酸・アモキシシリン(CVA/AMPC オーグメンチン)
ピペラシリン・タゾバクタム(TAZ/PIPC ゾシン)
セフェム系
第1世代
セファゾリン(CEZ セファメジン)
セファレキシン(CEX ケフレックス)
セファクロル(CCL ケフラール)
第2世代
セフォチアム(CTM パンスポリン)
セフメタゾール(CMZ セフメタゾン)
フロモキセフ(FMOX フルマリン)
第3世代
セフジニル(CFDN セフゾン)
セフジトレン・ピボキシル(CDTR-PI メイアクト)
セフテラム・ピボキシル(CFTM-PI トミロン)
セフポドキシム・プロキセチル(CPDX-PR バナン)
セフカペン・ピボキシル(CFPN-PI フロモックス)
セフォタキシム(CTX セフォタックス)
セフトリアキソン(CTRX ロセフィン)
セフォペラゾン(CPZ セフォペラジン)
セフタジジム(CAZ モダシン)
ラタモキセフ(LMOX シオマリン)
第4世代
セフォゾプラン(CZOP ファーストシン)
セフェピム(CFPM マキシピーム)
βラクタマーゼ阻害剤配合セフェム系
セフォペラゾン・スルバクタム(SBT/CPZ スルペラゾン)
カルバペネム系
メロペネム(MEPM メロペン)
ドリペネム(DRPM フィニバックス)
アミノグリコシド系
ゲンタマイシン(GM ゲンタシン)
トブラマイシン(TOB トブラシン)
アミカシン(AMK アミカシン)
アルベカシン(ABK ハベカシン)
イセパマイシン(ISP イセパシン)
リンコマイシン系
クリンダマイシン(CLDM ダラシン)
ホスホマイシン系
ホスホマイシン(FOM ホスミシン)
テトラサイクリン系
ミノサイクリン(MINO ミノマイシン)
クロラムフェニコール系
クロラムフェニコール(CP クロマイ)
マクロライド系
14員環マクロライド
クラリスロマイシン(CAM クラリス)
含窒素15員環マクロライド
アジスロマイシン(AZM ジスロマック)
グリコペプチド系
バンコマイシン(VCM バンコマイシン)
テイコプラニン(TEIC タゴシッド)
ニューキノロン系
第3世代キノロン
シプロフロキサシン(CPFX シプロキサン)
レボフロキサシン(LVFX クラビット)
第4世代キノロン
モキシフロキサシン(MFLX アベロックス)
ガレノキサシン(GRNX ジェニナック)
シタフロキサシン(STFX グレースビット)
サルファ剤・葉酸代謝阻害剤
ST合剤(TMP/SMX バクタ)
オキサゾリジノン系
リネゾリド(LZD ザイボックス)
抗菌薬を知る=βラクタム系を知る
ペニシリン系
ペニシリンG(PCG ペニシリンG)
アンピシリン(ABPC ビクシリン)
アモキシシリン(AMPC サワシリン)
ピペラシリン(PIPC ペントシリン)
βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系薬
アンピシリン・スルバクタム(SBT/ABPC ユナシン)
クラブラン酸・アモキシシリン(CVA/AMPC オーグメンチン)
ピペラシリン・タゾバクタム(TAZ/PIPC ゾシン)
セフェム系
第1世代
セファゾリン(CEZ セファメジン)
セファレキシン(CEX ケフレックス)
セファクロル(CCL ケフラール)
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セフォチアム(CTM パンスポリン)
セフメタゾール(CMZ セフメタゾン)
フロモキセフ(FMOX フルマリン)
第3世代
セフジニル(CFDN セフゾン)
セフジトレン・ピボキシル(CDTR-PI メイアクト)
セフテラム・ピボキシル(CFTM-PI トミロン)
セフポドキシム・プロキセチル(CPDX-PR バナン)
セフカペン・ピボキシル(CFPN-PI フロモックス)
セフォタキシム(CTX セフォタックス)
セフトリアキソン(CTRX ロセフィン)
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セフォゾプラン(CZOP ファーストシン)
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βラクタマーゼ阻害剤配合セフェム系
セフォペラゾン・スルバクタム(SBT/CPZ スルペラゾン)
カルバペネム系
メロペネム(MEPM メロペン)
ドリペネム(DRPM フィニバックス)
アミノグリコシド系
ゲンタマイシン(GM ゲンタシン)
トブラマイシン(TOB トブラシン)
アミカシン(AMK アミカシン)
アルベカシン(ABK ハベカシン)
イセパマイシン(ISP イセパシン)
リンコマイシン系
クリンダマイシン(CLDM ダラシン)
ホスホマイシン系
ホスホマイシン(FOM ホスミシン)
テトラサイクリン系
ミノサイクリン(MINO ミノマイシン)
クロラムフェニコール系
クロラムフェニコール(CP クロマイ)
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クラリスロマイシン(CAM クラリス)
含窒素15員環マクロライド
アジスロマイシン(AZM ジスロマック)
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バンコマイシン(VCM バンコマイシン)
テイコプラニン(TEIC タゴシッド)
ニューキノロン系
第3世代キノロン
シプロフロキサシン(CPFX シプロキサン)
レボフロキサシン(LVFX クラビット)
第4世代キノロン
モキシフロキサシン(MFLX アベロックス)
ガレノキサシン(GRNX ジェニナック)
シタフロキサシン(STFX グレースビット)
サルファ剤・葉酸代謝阻害剤
ST合剤(TMP/SMX バクタ)
オキサゾリジノン系
リネゾリド(LZD ザイボックス)
大半が
βラクタム系
本日のプログラム
ルール
を知る
微生物
を知る
抗菌薬
を知る
発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
βラクタムとは何ぞや
次に特徴を見ていきましょう
細胞壁の合成に必要なタンパク質
(PBP: penicillin binding protein)に結合し、
細胞壁の合成を阻害する構造を
βラクタム構造と呼ぶ
この構造を持つ抗菌薬が
βラクタム系抗菌薬である
βラクタム系の特徴
Time above MICがPK/PDの指標になることが多いです。
作用機序:細胞壁合成阻害
殺菌性
時間依存性
→頻回投与が原則(6-8時間毎)
βラクタム系に含まれる抗菌薬
βラクタム系といってもいろいろありますが、
ペニシリン系
セフェム系
カルバペネム系
モノバクタム系
βラクタム系に含まれる抗菌薬
まずは臨床で最も重要なセフェム系ついてみていきましょう
ペニシリン系
セフェム系
カルバペネム系
モノバクタム系
セフェム系抗菌薬
セフェム系抗菌薬もいろいろありますが、
第1世代セフェム
第2世代セフェム
第3世代セフェム
第4世代セフェム
セフェム系抗菌薬
最初に覚えるべきは2つだけです
第1世代セフェム…セファゾリン(CEZ)
第2世代セフェム
第3世代セフェム…セフトリアキソン(CTRX)
第4世代セフェム
セファゾリン
経口薬ではケフレックス(CEX)やケフラール(CCL)も
同様のスペクトラムです
略号:CEZ
商品名:セファメジンα®
剤型:注射薬
MSSAや連鎖球菌などの、
一般的なグラム陽性菌に対する第一選択薬
ブ 大
嫌 非
セフトリアキソン
経口薬ではフロモックス(CFPN-PI)なども同様のスペクトラム
ですが、bioavailabilityが低いのが欠点です
略号:CTRX
商品名:ロセフィン®
剤型:注射薬
大腸菌、プロテウス、クレブシエラなどの
一般的なグラム陰性菌に対する第一選択薬
ブ 大
嫌 非
おまけ:胆道排泄型薬剤
逆に言うと、アベロックス(MFLX)はキノロンなのに尿への
移行が悪く尿路感染症にはイマイチと言われています
CTRXは半分が胆汁排泄であり、よほどの腎障
害がない限り、腎機能による容量調節が不要
同様の抗菌薬:CAM, CPFX, MFLX, STなど
AZM, MNZ, CLDM, DOXY, RFPなどは完全
胆汁排泄型であり、腎機能による容量調節が
不要とされている
βラクタム系に含まれる抗菌薬
次にペニシリン系抗菌薬です
ペニシリン系
セフェム系
カルバペネム系
モノバクタム系
ペニシリン系抗菌薬
ペニシリン系だけでもたくさんありますが
ペニシリンG(PCG)
アンピシリン(ABPC)
アモキシシリン(AMPC)
アンピシリン・スルバクタム(SBT/ABPC)
アモキシシリン・クラブラン酸(CVA/AMPC)
ピペラシリン(PIPC)
ピペラシリン・タゾバクタム(TAZ/PIPC)
ペニシリン系抗菌薬
最初に覚えるべきはこの2つだけです。
ペニシリンG(PCG)
アンピシリン(ABPC)
アモキシシリン(AMPC)
アンピシリン・スルバクタム(SBT/ABPC)
アモキシシリン・クラブラン酸(CVA/AMPC)
ピペラシリン(PIPC)
ピペラシリン・タゾバクタム(TAZ/PIPC)
アンピシリン・スルバクタム
経口薬ではオーグメンチン(CVA/AMPC)なども
同様のスペクトラムです
略号:SBT/ABPC
商品名:ユナシンS®
剤型:注射薬
一般的な嫌気性菌に対する第一選択薬
ブ 大
嫌 非
ピペラシリン・タゾバクタム
残念ながら、抗緑膿菌ペニシリンの経口薬はありません
略号:TAZ/PIPC
商品名:ゾシン®
剤型:注射薬
緑膿菌に対する第一選択薬
MRSA 緑膿菌
CD 結核菌
おまけ:ABPCとAMPC
左がアンピシリン(ABPC) 右がアモキシシリン(AMPC)
AMPCはABPCが腸管から吸収されやすいよう
に-OHをくっつけたもの
したがって抗菌スペクトラムは同一と考えて
よい
本日のプログラム
ルール
を知る
微生物
を知る
抗菌薬
を知る
発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
まだあるβラクタム系
次は超広域抗菌薬、カルバペネム系について見てみましょう
ペニシリン系
セフェム系
カルバペネム系
モノバクタム系
カルバペネム系抗菌薬
サイクリング療法:
「メロペンが効かないからフェニバックスに替える!」みたいな
同じスペクトラムの薬の使い方。昔流行ったとかなんとか。
いろいろありますが、メロペネム(MEPM)を
覚えておけば困りません
ドリペネム(DRPM)でもよく、これらは同一と
思ってください
(したがって、サイクリング療法は無意味です)
岡秀昭和(2015) 感染症プラチナマニュアル
矢野晴美(2010) 絶対わかる抗菌薬はじめの一歩 などから改変
初期治療としてカルバペネムが妥当な感染症
発熱性好中球減少症
壊死性筋膜炎
重症敗血症など、原因菌が不明で=ESBLs産生菌かもしれず、
外れると患者を失う場合
重度の糖尿病やAIDSなどの免疫不全があり、
原因として緑膿菌が想定される場合
重篤な医療関連感染症
重症腹腔内感染症でグラム陽性菌、緑膿菌を含むグラム陰性菌、嫌気性菌
の混合感染が想定される場合
カルバペネムは「よほどの事態でないと」使わないと思ってください!
本日のプログラム
ルール
を知る
微生物
を知る
抗菌薬
を知る
発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
メトロニダゾールとクリンダマイシン
なので、ここではまずメトロニダゾールを覚えましょう
どちらも嫌気性菌を対象とした抗菌薬
クリンダマイシンは誤嚥性肺炎に使われすぎて
耐性化が深刻
メトロニダゾール
もちろん、一般の嫌気性菌や、原虫に対する活性もあります
略号:MNZ
商品名:フラジール®(経口), アネメトロ®(静注)
作用機序:DNA障害
耐性嫌気性菌(Clostridium属)に対する
第一選択薬
MRSA 緑膿菌
CD 結核菌
おまけ:クリンダマイシンについて
βラクタム系にアレルギーがある場合などに使われることも
略号:CLDM
商品名:ダラシン®(経口)、ダラシンS®(静注)
作用部位:リボソーム50S(蛋白合成阻害)
静菌性だが骨への移行がよいため、
骨髄炎などに用いられる
本日のプログラム
ルール
を知る
微生物
を知る
抗菌薬
を知る
発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
嫌気性菌 非定型菌
βラクタム系 βラクタム系その2
メトロニダゾールとクリンダマイシン ニューキノロンとマクロライド
ニューキノロンとマクロライド
非定型菌カバーがこれらの薬剤の本分です
どちらも非定型菌をカバーする
ニューキノロン系
これまたいろいろありますが
シプロフロキサシン(CPFX)
レボフロキサシン(LVFX)
モキシフロキサシン(MFLX)
ガレノキサシン(GRNX)
シタフロキサシン(STFX)
ニューキノロン系
まずはレボフロキサシン(LVFX)から覚えましょう
シプロフロキサシン(CPFX)
レボフロキサシン(LVFX)
モキシフロキサシン(MFLX)
ガレノキサシン(GRNX)
シタフロキサシン(STFX)
レボフロキサシン
とても優秀な薬であるクラビットですが、注意点もあります。
略号:LVFX
商品名:クラビット® 経口・注射
作用部位:DNAジャイレース、トポイソメラーゼIV
殺菌的抗菌薬
広域スペクトラム=何にでも効く
組織移行性が高い=どこにでも効く
濃度依存性=1日1回でもOK!
ニューキノロンの注意点
結核菌にも「部分的に」効いてしまう
→診断や治療の遅れにつながる恐れがある!
「長引く咳」に安易にニューキノロンを使用
するべからず!
ニューキノロンは大切に
スペクトラムが広く、緑膿菌を含むグラム陰性
菌、非定型菌、(新しい薬では)グラム陽性菌にも効く
1日1回の経口投与でよく、組織移行性も高い
→こんな優れた薬は他にない
だからこそ大切に使おう
マクロライド系
一方マクロライド系の中では
エリスロマイシン(EM)
クラリスロマイシン(CAM)
アジスロマイシン(AZM)
マクロライド系
アジスロマイシン(AZM)を覚えておけばまずはOKです
エリスロマイシン(EM)
クラリスロマイシン(CAM)
アジスロマイシン(AZM)
アジスロマイシン
略号:AZM
商品名:ジスロマック® 経口・注射
作用部位:リボソーム50S(蛋白合成阻害)
非定型菌に対する第一選択薬
ブ 大
嫌 非
アジスロマイシンの特徴と注意点
他にもいろいろな抗菌薬がありますが、今回はこここまで。
1日1回の投与でOK
非定型菌のカバー
グラム陽性菌・陰性菌にも効くが、静菌的
肺炎球菌は耐性化が深刻なため、
非定型肺炎を疑ってもセフトリアキソン
(CTRX)などを併用するのが無難
まとめ1
発熱・CRP上昇を根拠に抗菌薬を開始しない
患者背景と感染臓器から原因微生物を推定し
抗菌薬を決定する(感染症のトライアングル)
抗菌薬の開始前には培養検査を行い
感受性が判明したらde-escalationを行う
まとめ1
発熱・CRP上昇を根拠に抗菌薬を開始しない
患者背景と感染臓器から原因微生物を推定し
抗菌薬を決定する(感染症のトライアングル)
抗菌薬の開始前には培養検査を行い
感受性が判明したらde-escalationを行う
まとめ1
発熱・CRP上昇を根拠に抗菌薬を開始しない
患者背景と感染臓器から原因微生物を推定し
抗菌薬を決定する(感染症のトライアングル)
抗菌薬の開始前には培養検査を行い
感受性が判明したらde-escalationを行う
まとめ2
ブ 大
嫌 非
MRSA 緑膿菌
CD 結核菌
第1世代セフェム
セファゾリン(CEZ)など
βラクタマーゼ阻害薬
配合ペニシリン
アンピシリン・スルバクタム
(SBT/ABPC)など
第3世代セフェム
セフトリアキソン(CTRX)など
マクロライド
アジスロマイシン
(AZM)など
抗MRSA薬
抗緑膿菌ペニシリン
ピペラシリン・タゾバ
クタム(TAZ/PIPC)など
メトロニダゾール
(MNZ)など
抗結核薬
原
則
例
外
お疲れ様でした。
参考資料
特に下の二つは無料なのに非常に参考になります!
矢野晴美(2010). 絶対わかる抗菌薬はじめの一歩 羊土社
矢野晴美(2011). 感染症まるごとこの一冊 南山堂
岩田健太郎, 宮入烈(2012). 抗菌薬の考え方、使い方 ver.3 中外医学社
藤本卓司(2013). 感染症レジデントマニュアル 第2版 医学書院
青木眞(2015). レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 医学書院
岡秀昭(2015). 感染症プラチナマニュアル MDSI
佐野邦明(2015). 抗菌薬と細菌について ver2.01
http://www.slideshare.net/kuniakisano9/ss-23099611
森重湧太(2014). 見やすいプレゼン資料の作り方 リニューアル増量版
http://www.slideshare.net/yutamorishige50/ss-41321443
ありがとうございました
ルール
を知る
微生物
を知る
抗菌薬
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発熱≠感染症 感染症のトライアングル
培養の重要性 初期治療とde-escalation
グラム陽性菌 グラム陰性菌
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